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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第25回 第二章・五
「ふうん、そんなことがあったのね」
 竜聖の話を聞き終え、悠姫は少し考える素振りを見せた。
「どうすることもできないわ」とあっさり答えられたらどうしようかと不安だった竜聖は、ひとまず安堵した。だが、考えた末に「手がない」といわれても困る。せめてこの異常が人前で起きないよう抑えてくれるか、または抑える方法を教えてもらわないことには、相談した意味がない。
 悠姫が考え込んでいた時間は、おそらくそんなには長くなかったのだろうが、竜聖にはまさに一分が十分の如くに感じられた。
 時計の秒針が、時を刻む音を無意識に数えながら、悠姫の言葉を待つ。
 不意に悠姫が竜聖の顔を見た。
 表情というものに乏しいため、名案を思いついたようには見えないが、「打つ手がない」と諦めたようにも、何となくだが、見えなかった。
 竜聖は期待を込めて聞いた。
「何か、手立てがあるのか?」
 その言葉に、やはり無感情に悠姫は答えた。
「残念だけど、今すぐ『完治』させる方法はないわ。ただ」
「ただ?」
 一瞬落胆しかけた竜聖だが、悠姫の言葉の続きに希望を見たような気がして、その先を促した。
「私の手伝いをしてくれれば、何とかなる」
「……何?」
 何を言い出したのか、よくわからず、竜聖は頓狂な声を上げた。悠姫が冗談を言うようなタイプではないと、竜聖は遇って間もないながらも感じていた。だから、この言葉にも意味があるはずなのだ。
「それはどういう意味?」
 竜聖の言葉を待っていたように、悠姫は話し始めた。
「君の場合、かなり特殊なケースと考えられる。普通は精神が影響を受けるものだし、私も、もし影響があるなら精神に出るように『呪』をかけておいたから。にも拘わらず肉体に変調が現れたということは、精神ではなく君の体霊の方に影響が出たということ。『体霊』のことはわかるかしら?」
 悠姫の問いかけに竜聖は黙って頷く。それを見て悠姫は話を再開した。
「おそらくこれは、君の体に長い間仙珠が埋められていたことと無関係ではないと思う。それがどういう因果関係でそうなったのか、私にはわからないけど」
 さらに悠姫は話を続けた。
「もし仙珠の影響でそんな事態が引き起こされたのだとしたら、私ではどうすることもできない。でも、私の故郷である竜夢神仙界になら、どうにかできる方がいらっしゃると思うの。そして神仙界に行くには、千岳大帝から仙珠を取り返さなければならない」
「仙珠云々」という悠姫の言葉に、竜聖は兵摩との話を思い出していた。
 竜聖が思案気な顔でもしていたのだろう、悠姫が「何か気にかかることがあるのか」と、尋ねた。
 前日の兵摩とのことを簡単に話すと、悠姫は少しばかり鼻を鳴らして言った。
「フン。あらかた話は聞いてる訳ね。やっぱり兵摩がいて正解だったわ。私も説明する手間が省ける」
 何となくだが、竜聖はこの女性が好きになれないと感じた。兵摩がどうしてあそこまでこの女性に肩入れするのか、竜聖には理解できない。
 だが、それとこれとは別問題。今は、怪物化してしまうことを防がねばならない。その為には、悠姫の協力は不可欠だし、必然的に彼女の話には乗らなければならない。竜聖は心の奥底から、まるでガスのように噴出を始めた怒りの感情を、無理矢理抑え込んだ。
「あんたの手伝い、て、何をすればいいんだ?」
 言ってから、竜聖は自分の言葉や物言いにトゲがあることに気づいた。一瞬、悠姫の機嫌を損ねてしまうかもという不安が頭をよぎったが、出てしまった言葉はもう消せない。それに、何よりこの女性に対して腹立たしいものを感じているのは確かだった。少しでも何か言わないと、自分だけでなく、兵摩も報われない気がするのだ。


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