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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第22回 第二章・二
 目が覚めた時、竜聖の目には涙がにじんでいた。それが今見た夢の内容に対してでないことは、しばらく起きあがれないほど虚脱していることから明らかだった。
 しかしいつまでも寝ているわけにはいかない。
 昨日はあんなことがあった上、兵摩と昼過ぎまで話し込んでいたため、学校を欠席してしまった。なるべくなら二日も続けて欠席するのは避けたい。
「伯父さんたちや美凰が心配するだろうからな」
 一人暮らしをする、と告げた時、伯父の鴻野大介(だいすけ)と、妹の美凰は反対した。主に健康面を気遣ってのことだった。
 もし万が一、病気になった時、いったい誰が看病してくれるというのか。これが大介と美凰の言い分だった。
 しかし伯母の鴻野良志子は違った。
 竜聖は男の子だし、多少はそんな生活をするのもいいのではないか。それに鴻野夫妻の一人娘・亜津紗は隣県で大学生をしているが、その住まいとするマンションは、竜聖の住もうとする地域へ電車で十分のところにあり、意外に近い。何かあれば亜津紗に頼ればいい。何より、自分の弟・京一郎(きょういちろう)の息子なのだから、何かあっても乗り越えられる。これが良志子の言い分である。
 そのあと、学業がおろそかになるだの、生活が荒れるだの、いろいろと議論は続いたが、結局は良志子の意見が通った。
「良志子伯母さんの方が強いからな」
 と、竜聖はその時、心の中で呟いたものだ。
 そんな経緯で出てきた以上、あんまり心配をかけるわけにはいかない。竜聖はゆっくりと起きあがり、時計を見た。
「六時三十分か」
 昨日も同じ時間に起きた覚えがある。これまでは朝七時起床だったが、生活リズムが変わってしまったらしい。
 そんな風に思いながら、伸びをしようと腕を顔の近くへ持ってきた時だった。
 何か違和感を感じて竜聖は左腕を見た。
 異常なほど筋肉質にふくれ上がり、爪はまるで猛禽のそれのように伸びて湾曲している。そして皮膚の表面を覆っているものは、体毛にしては幅広で鱗にしては狭くて長い、黄色の何かだった。
 思わず息をのむ。
 心臓の鼓動が早くなる。
 竜聖は悲鳴を上げて自分の腕をタオルケットの中に押し込んだ。そしておそるおそるタオルケットをめくる。
 やはりそこにあるのは異形の腕だった。
 考えがまとまらない。いったい何がどうなってしまったのか。
 その時、兵摩の言葉が天啓のように脳裏にひらめいた。
「そうか、これって『副作用』なのかもしれない」
 昨日、兵摩は神仙の心臓を体内に入れたことで何らかの「副作用」が起きることを示唆していた。あの時は「感情が抑えられなくなる」という、そんな類の副作用を想像していたが、まさかこんな形で異常を目にすることになろうとは。
 いったい、どうすればいいのだろう。こんな腕ではもう人前には出られない。いや、美凰や伯父夫婦にだって見せられない。
 もはや自分はこの人間社会で生きていけない体になってしまった。


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