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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第12回 第一章・十一
「通路を塞ぐ」ということについて、兵摩が少し説明した。それによると「通路を塞ぐ」というのは「ものの喩え」で、実際には神仙界から人間界へ、あるいは人間界から神仙界へと行き来する呪術を、いっさい無効にしてしまうことだという。
 それは「呪術的行為」であるため、再び「道を開く」には術に使ったものと同じ「物実(ものざね)」すなわち仙珠が必要なのである。それが故に追撃の手は人間界に及ぶことはない、というのが千岳大帝の思惑だったのである。
 ここまでの話を聞いて、竜聖は疑問を挟まずにいられなかった。
「どうして千岳大帝は、仙珠を強奪したりしたんですか?」
 話が核心に触れたのが、あからさまに険しくなった兵摩の眉でわかった。
「彼は、仙珠の力を使い、この人間界を支配しようとしているのだと、悠姫から聞かされました」
 竜聖は、皮膚が一気に粟立つのを感じた。それが話の内容に対してなのか、いきなりふくれあがった兵摩の「敵意」に当てられたせいなのかはわからない。
「仙珠は、竜夢神仙界が拓かれた当時から存在しているといわれています。そのためか、仙珠は『竜皇姫が竜夢神仙界を拓く時に、助力した煌竜(こうりゅう)の血が固まった物である』という伝承があるんです」
「血が固まった物」という言葉を聞いた途端、なぜかごく自然に、竜聖の脳裏に、透き通った紅い輝きを持つ宝石の姿が浮かぶ。それは握り拳ほどの大きさで、まるでカットされていない原石のようで…。
 その瞬間、竜聖の全身に静電気が走った。その衝撃はゆっくりと記憶の扉をこじ開けていく。
 竜聖のそんな様子に気づいているのかいないのか、兵摩は淡々と話を続ける。
「千岳大帝が施した呪術は完全なものではありませんでした。幾分かの『ゆらぎ』があったのです。それを利用し、悠姫は単身で人間界にやってきました。そして、そこで……」
 次の瞬間、竜聖は自分でも抑えられないほどの衝動で叫び声をあげていた。
 頭の中に鍵穴の錆びた宝箱があって、その鍵穴に鉄の杭を打ち込んで無理矢理こじ開ける。
 そう形容したくなるほどの不快な頭痛が頭蓋内を駆け巡る。
 竜聖は自分でも気が付かない内に大声で叫んでいた。
「やめてくれ! やめてくれ!」
 だが、鉄杭を打ち込む手は止まらない。
“何を言う。この宝箱を開けろと言ったのはお前ではないか? この中にある「お宝」を拝みたくはないのか?”
 声なき声が竜聖を責める。その声は、竜聖が苦しみ悩む様を楽しんでいるかのようだ。そして気のせいか、その声は兵摩のものに似ているように思われた。
 だがそんな風に思う余裕があったのも一瞬のこと。すぐさまたとえようもない苦痛に、すべての意識がとってかわられた。
 頭をかきむしり、椅子から転げ落ち、床を転げてのたうち回る。
 どれほど苦しんだだろう。どれほど悶えただろう。唐突に脳髄をえぐられるかのような痛みは消え失せた。そして、まるで蓋の開いた箱の中に新鮮な空気が入り込むように、空虚になった竜聖の頭に幼い頃の記憶が蘇ってきた。


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