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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第10回 第一章・九
「あの、神仙界に住んでるってことは、仙人なんですよね? 仙人なのに、死んだりするんですか?」
 竜聖は話の途中とは思ったが、ふと気づいた疑問を口に出した。
「君の疑問ももっともです。簡単にお答えしておきましょう。竜夢神仙界に住まう者には大きく分けて四種類の者がいます」
 話の腰を折られた格好になった兵摩だが、いやな顔一つせず、竜聖の疑問に答えた。
「そもそも竜夢神仙界が拓(ひら)かれた当時、そこには他の神仙界から、『引っ越して』きた者たちだけが住んでいたそうです。それはもともとこの神仙界が、ある『理念』を抱いた神仙たちのために拓かれたからだそうです」
「『ある理念』?」
「残念ながら、僕はそれについて詳しく知りません。ただ、人間界と密接な繋がりを持ち、お互いの世界を進歩発展させよう、ということに関係あるらしいということは、悠姫から聞いたことがあります」
 兵摩も知らないのであれば知りようがない。竜聖もそのことについては、それ以上聞かなかった。
「話を戻しますね。その次にその神仙界にやってきたのは、他の『世界』からの転生者だったそうです。彼らは人間だったこともありますし、動物だったこともあります。人間界とは全く違う世界、いわゆる妖精界や、僕も知らないような異なる世界から来た者もいます。三番目は神仙たちによって連れて来られた、あるいは自分の意思でやって来た他の『世界』の者たちです。もちろん人間や動物だけでなく、妖精や、どれにも当てはまらない者たちもいます。実は僕もこの三番目の種類の者なんですよ」
「え? 兵摩さんて、もともとの仙人じゃないんですか?」
 思わず聞き返した竜聖だが、何となく兵摩がどこか「人間くさい」のも感じていた。だから、驚いたと言うより、むしろ「やっぱり」という気持ちの方が大きかった。
 兵摩は頷いた。
「僕はこの人間界の出身です。君たちの歴史観で言うとペリーの『黒船来航』の頃の人間ですよ」
 ペリー提督が日本に来航したのは一八五三年のこと。百五十年も前の話である。にわかには信じがたいが、ここまで不可思議なものを見せられていると、ごく自然に納得してしまう。
 竜聖はこの話に、ただ頷くしかできなかった。
「四番目は、もともといた神仙と後から来た者との混血。つまり一番目と、二番目および三番目とのハーフということです」
 神仙との混血ということは、神仙たちは人間と非常に近い存在なんだろうか? それとも不可思議な術を使う神仙のことだから、遺伝的に全く違う生命体でも子供ができてしまうんだろうか?
 竜聖の頭の中には、割とどうでもいい疑問が渦巻いていた。
 このことについて聞いてみたら、兵摩はなんと答えるだろう? 一瞬そんなことを思ってみたりもしたが、それは竜聖が本当に知りたいことではない。これ以上脱線しても、意味がない。
 竜聖が何も言わないのを質問なしと判断したのか、兵摩が話を再開した。
「基本的に不死の存在は最初からいた神仙のみです。ですが、修行を積むことにより『仙(せん)胎(たい)』を得れば、そのほかの者たちも不死になれます。残念ながら僕はまだ修行中なので、もし千岳大帝と一騎打ちすることにでもなれば、命はないでしょうね」
 仙胎というのは、いってみれば「気」でできた体のようなものである。厳密にいえば「気」というよりは、意念やエネルギーが実体化したものとするべきだろうか。
 淡々と語った兵摩だが、その眼差しは真剣であり、決していい加減なことを言っているのではないことがわかる。
 竜聖は今更ながら、この志垣兵摩と名乗る男の言うことを信じる気になっていた。


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