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作品名:言凝、幸わう星 作者:ジン 竜珠

第53回 第五章・十一
「もちろん、誰かと較べたわけじゃない。でも、何となくわかるんです。普通なら、もっと悩んでるんじゃないかって。悩んで悩んで、何にも手につかないんじゃないかって」
 今までは、それを「精神の強さ」がずば抜けているって、ひそかにうぬぼれていた。でも、そうじゃないかもしれない。
「俺、もしかしたら、人間じゃないのかも……」
「アーヴィング!!」
 俺の言葉を遮り、マスミさんが叫んだ。初めて聞くような大声だ。一瞬、呼吸が止まるのを覚えた俺は、ゆっくりと振り返り、彼女を見上げた。
 瞳に涙を浮かべ、マスミさんが俺を見下ろしている。
「マスミさん」
 二の句が告げられなかった。それは彼女の涙を初めて見たことや、哀しそうな表情のせいもあったが、何より俺の心を動かしたのは、彼女が俺のせいで涙を浮かべているという事実だった。
「哀しいことを言うな。主は間違いなく、皇哲弥とヴァージニアとの間に生まれた、一人息子なのじゃ。かけがえのないたった一人の息子なのじゃ」
 もう、俺は言い返せなかった。両親の記憶がない俺。一方、マスミさんは俺の両親のことを多分、俺よりも、よく知ってる。だからこそ、俺の今の言葉が、とても哀しくなるのだろう。
 俺は、深呼吸をしてから言った。
「マスミさん、教えてくれませんか、俺の両親のこと」
 俺から離れ少し天を仰ぐと、マスミさんは部屋のインターフォンのところまで行き、未来さんに飲み物を持ってくるように言った。
「儂にはホットココアを、アーヴィングは……。何がよい?」
「同じものでいいです」
 俺がそう答えると、マスミさんは笑顔を浮かべる。
「未来の作るココアは絶品じゃぞ」
 そして飲み物が届き、マスミさんの話が始まった。


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