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作品名:言凝、幸わう星 作者:ジン 竜珠

第45回 第五章・三
 自分が何者かなんて、悩んでも解決のつかないことだ、と、昨夜(ゆうべ)あれほど自分に言い聞かせたのに、結局俺の頭の中から疑問は消えなかった。ろくすっぽ眠れなかったせいで、頭がぼやけている。特に「言凝」がどうの、なんて話を耳にすると、余計な想像が浮かんでくる。
「俺のこの命は、言凝でプログラムされた、紛い物」などというSFでしかありえないような妄想だ。朝からかなり鬱が入ってしまう。
 学校に着いても、頭の霞はとれない。もっとも半分は睡眠不足のせいもあるだろうが。こんな状態で、今日一日を過ごせるんだろうか。
「今日は木曜日。一限目は化学。……よし、間違いないな」
 自分の記憶と、教室の後ろに張り出された時間割表を確認する。朝、出がけにも確認はしたが、どうにも自信がなかったのだ。だが、とりあえず授業を乗り切ることは出来るらしい。
 自分の席に戻ろうとした時、前髪をシャギーにした、ショートカットの女子が声をかけてきた。隣のクラスの城(じょう)真琴(まこと)だ。
「皇。すまないけど、今日の昼休み、ちょいと時間もらえるかい?」
 いつものことだが、彼女は妙な物言いだ。
「昼休み?」
 頷くと、城は人目を憚るように辺りを見回して、誰もこちらに注意を向けていないのを確認した。そして小声で、しかも早口で言った。
「ちょいと込み入った話がある。サシで話がしたいんだ」
 そして俺の返事を待たずに、教室を出て行った。

 そして昼休み。
 午前中の修平や景の掛け合い漫才のおかげで、俺はどうにかいつもの調子を取り戻していた。もちろん根本的な問題は解決していないが、気分転換できるぐらいの余裕は取り戻したようだ。
 この辺りの精神的構造は、確かにどうかと思う。昨夜は眠れないほど悩んだのに、ちょっと友だちとバカ話に興じているだけで、気持ちの切り替えが出来る。精神的に強い、てことかも知れないが、それ以外に理由があるとしたら? 例えば、俺が言凝で創られた型人だからとしたら?
 だが、まあ、今はどんなに悩んでも答が出るようなことじゃないのは事実だ。目の前のことに集中しよう。
 というわけで、どういうわけか俺たちは屋上にいる。
「寒いから、誰も来ないし、確かに内緒話にはいいが、ホントに寒いな!」
 震えながら俺は言った。
「すまねえ。誰にも聞かれたくない話だからさ。でも、ほんと、寒いな。今日は朝から曇り空だったから、風邪引きそう」
「だったら、とっとと話、すませてくれ」
 せかすと、城も頷いた。寒いからな、彼女も早くあったかいところに行きたいんだろう。
「不躾とは思うが、本題だ。皇、君はカノジョとか作らないのか?」
「はあ?」


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