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作品名:言凝、幸わう星 作者:ジン 竜珠

第35回 第四章・三
「簡単なことだ。結局、アーヴィングは持ち直した。その上でこのフィルムを見ると、レポーター、医師ともに実に配慮を欠いた発言を繰り返している。その部分を編集したら、意味のないものができてしまう。故に、これは放送できなかったと考えられる。実際の放送では、後日、改めて撮り直されたものが使われたんじゃないか?」
 いつもながら理路整然と話す景は、格好いいと思う。実際、景に憧れている女子は多いしな。
 俺は、ポケットから折り畳んだレポート用紙を出す。例の住所と住宅地図の写しだ。
「じゃあ、これはその花火工場の場所と地図かもな」
「何だ、それ? ちょっと見してみ」
 俺は修平に紙を手渡した。
「うん、ここだよ、工場の跡地は。つーか、俺、中坊ン時に、何度かお前、連れてってるじゃん」
「ほんとか?」
 初耳だ。十歳以前のことならいざ知らず、中学生の頃のことなら覚えているはずだ。
「ああ。でも、お前、その度(たんび)に忘れちまってよ。まあ、あんな事故にあったんだ、トラウマってても、しょうがないけどな」
 返してもらった紙を見ながら、俺は記憶をさらう。だが、やはり、この場所に来たという記憶はない。
「それよりもさあ」
 と、修平が身を乗り出してくる。
「DVD持ってきてるから期待したのに、なんだよ、これは? アイドルのプロモとか、えっちぃのとか、そういうの持ってこいよな」
 不満げに口を尖らせる修平を見て、景が眉をひそめる。
 何というか、この二人は、いいコンビだよな。
「高瀬、お前には高校生活における基本的ルールと礼儀というものを、じっくりと教え込む必要があるかもな」
 ちょっとした漫才を横目に見ながら、俺は例のレポート用紙を見ていた。
 ここに俺の失われた記憶があるのかも知れない。
 そんな思いを抱きながら。


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