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作品名:言凝、幸わう星 作者:ジン 竜珠

第34回 第四章・二
 一通り見終わったところで、俺は二人に小声で尋ねた。
「なんか、わかるか?」
「そうだな」
 と、イヤホンをはずして、まず景が小声で言った。
「ここに映っている医師は、おそらく葦原中央病院の、赤島医師だろう。彼は二年前、肺炎で亡くなっているはずだから、少なくともそれより前に撮られたものだな」
「俺も俺も」
 と、修平が小声とともに手を挙げる。授業中では絶対に見られない姿だ。
「一緒にいる若いレポーターだけど、こいつ大平(おおひら)敦(あつし)っていうテレビレポーターだぜ。確かこいつ、三年前に取材で行きすぎがあったとかで、活動自粛したはずだ。ほかにもトラブルがあるとかで、未だに表舞台には出てねえはずだ」
「詳しいな」
 俺が本気で感心して言うと、修平は「ヘヘン」と胸を反らしていった。
「女の子ってのはな、こういう下世話な話が好きだったりするんだよ。だから潤滑油として、過去のワイドショーネタも仕入れておくのが、紳士の嗜みなのさ」
「徹頭徹尾、どうでもいいな」
 冷酷なまでに、修平のコメントを切って捨てると、景は顎に手を当てた。
 なんか、修平が固まってるけど、まあ、いいか。
「今の話から考えると、三、四年以上前に撮影された、ワイドショー用のフィルムということになるな。それに、内容から見て、おそらく」
 しばらく考えを整理するように目を閉じた景だが、何か答をはじき出したらしい。ゆっくりと目を開けて言った。
「六年前に起きた海浜地区の、花火工場跡の爆発事故についてのものだろう」
「え!?」
 思わず大きな声を出す俺の口を、いつの間にか立ち直っていた修平が、慌てて塞ぐ。勉強中だった何人かが、こちらを睨む。
 俺は、ちゃんと図書室に勉強にきた真面目なクラスメートに、申し訳ない思いで頭を下げると、小声で景に聞いた。
「間違いないのか?」
「ああ、多分」
「なんで、わかる?」
「二人の死者、さらに他にもいたであろう行方不明者、フィルムの撮影時期、葦原中央病院が舞台になっていること、そしてワイドショーが取り上げるという話題性。全てを満たすのは、それぐらいしかないからな」
 そう言って俺を見ると、景はやや沈痛な面持ちで続けた。
「お前にとっては辛い過去を思い出させることになったかも知れん」
「いや、記憶ないから、大丈夫だ」
 強がりではなく俺は言った。
「だとすると、二人は親父とお袋か。でも、生存者については触れてないな。俺は助かってるから行方不明者じゃないし」
「そんなのはよくある誤報さ、スピードを重視するあまりのね。つまり」
 と、景は持参したレポート用紙に、ペンで人の形と建物っぽいものを描いた。
「事故が起こる時に六人いた。そのうち、何人かは事故直後、逃げ出すことに成功した。あるいは誰かに助け出された。しかし、その場面は混乱に紛れて誰にも見られていない。結果、六人いたはずだという情報だけが一人歩きをする」
 言いながら、ペンで矢印を描いていく。
「おそらく、行方不明者の安否が確認されたか、事実が判明したあとで、人数の訂正報道がされているはずだ。もっとも、訂正報道がない可能性もあるけどな」
「そうか」
「情報を整理すると、多分これは『放送中止』になったフィルムだろうな」
「ほう? なんで?」
 修平が好奇心丸出しで問う。確かに、景の推理ショーを見られるのは滅多にないからな。俺もいつの間にやら身を乗り出すようにして景の言葉を待っていた。


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