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作品名:言凝、幸わう星 作者:ジン 竜珠

第33回 第四章・一
 四時限目は現国だが、担当教師の都合で自習となった。教室で自習するか、図書室で自習するか、クラス委員に自己申告して皆、それぞれの行為に移る。
 まあ、要するにお喋りタイムだ。「メガネ美少女」として一部に熱狂的なファンを持つという委員長の殿村(とのむら)沙樹(さき)が、皆に静かにするように指示を出す中(もっとも何の効果も現れていないが)、俺は景のところに行った。
「よう、図書室で自習しないか?」
「なんだ、珍しいな、お前の方から誘いに来るとは」
 なんかの分厚い本(「犯罪心理学」という文字が見えた)を読み始めていた景は、心底、仰天したように目を丸くして俺を見上げた。
 失礼な奴だな。
 と、声に出して言えない、普段の素行が辛い。
「ちょっと話があってな」
 そう言いながら、俺は例のDVDロムを見せる。
「少しばかり、お前の知識に頼りたいんだ」
 景は「ふむ」と目を細める。
「DVDか?」
「ああ。今ひとつ中身が、意味わからなくてな。お前なら、何かわかるんじゃないかと思って」
 そう俺が言ったところへ。
「俺も混ぜてくれると嬉しいなあ」
 と、混ざってきた男が一人。修平だ。
「すでに混ざってきているだろうが」
 溜息混じりに言い放つ景を無視するかのように、修平は俺の手にあるDVDを見る。
「今の時間なら、電脳研の部室が空いてるぜ」
 つまり不法侵入しろと言ってるのだ。
「そんな真似ができるか」
 と景が言い、自分の鞄の隣にある黒いキャリングバッグを指さす。
「ちょうどいい。DVDの再生なら俺のノートでいいだろう。場所は図書室でいいんじゃないか。イヤホンがあるからな」
 俺としては景にDVDを渡して、家に帰ってからでもじっくり調べてもらうつもりだったが、今ここで何かわかるなら、その方がいい。
 景は鞄の横に置いていたノートパソコンを抱えると、委員長に申告して図書室へ向かった。俺たちも後に続いた。

 俺たちは人目をはばかるように、奥の方に陣取った。
 図書室には、意外と人はいない。確か、半分近くは教室を出て行ったはずだが、今ここにいるのは俺たちを含めても五、六人。クラスの五分の一程度だ。
「みんな、どこへ行ってんだかな」
「そんなの、気にするだけ野暮ってもんさ」
 俺の呟きに、修平がニヤついて応えた。
 確かにそうだ。教師に見つからなければ、問題はないだろう。同じことを思ったのか、パソコンの電源を起ち上げた景が冷ややかに言った。
「全ては自己責任だ。指示にないことをやって、先生方に怒られるのは個人の選択と行動の結果であって、どこにも文句を持っていくようなことではない。言われたことを守らない方が悪い」
「景。そういう考えは典型的な『指示待ち人間』だぜ? 社会じゃ通用しないよ?」
「仕方あるまい? 学校とは、膨大な『指示待ち人間』を培養して、世の中に垂れ流すシステムだ」
 修平にシニカルに笑ってみせると、景は「準備できたぞ」と言ってイヤホンをセットした。
 俺は既に内容を知っているから、イヤホンは右と左にわけて、景と修平が当てた。


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