小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:言凝、幸わう星 作者:ジン 竜珠

第3回 第一章・二
 一月半ばの土曜日、よく晴れた昼下がり。午前中のバイトが終わって帰る途中、何となく立ち寄った河川敷。子どもたちがキャッチボールをしたり、若いお母さんと、女の子が草花を摘んでいる、そんなのどかな風景の中で、突然出くわした少女。年は十五、六に見えるから俺と同い年ぐらいだろう。今の俺の記憶にないから、それ以前の知り合いということか。
 もっとも本当に、この娘が俺の幼馴染みだとすれば、だが。
 そう、どうにも胡散臭いのだ。これはもう感覚とか直感とか、本能とか呼ぶべき奥深いところからの警告なんじゃないかと思えるほど、強烈に違和感がある。
 俺は改めて女の子を見た。セミロングの髪は少し赤茶けているものの、綺麗な艶に輝いている。顔つきは目鼻立ちがはっきりしていて、美少女だと思う。アイドルというよりは、ごく自然に隣にいる、そんな感じがするような親しみを覚えるけど、何となく胡散臭い。それは着ている服が市内の女子校の制服を改造したような妙にエロちっくなものだからとか、俺に必要以上に親しげに話しかけてくるからとか、そういうのとはやっぱり違う。
「悪い。本当に君のこと、わかんないんだけど?」
 俺は頭を掻きながら言った。
 さすがに「胡散臭いから」というのは言えないが。
「うーん。昔、九歳の頃、市内の遊園地で遊んだ時のこと、覚えてない?」
「遊園地?」
「そう。『ヴィヴィッドステージ』でのこと。本当に覚えてない?」
 言いながら、彼女が俺の顔、いや瞳をのぞき込む。
「ヴィヴィッドステージ?」
 彼女の瞳をのぞき込むように、俺も彼女の顔を見る。
 すると、どうだろう。かすかながら情景が脳裏に蘇ってきた。
 あれは確かに九歳の頃だ。両親に連れられ、俺は市内有数のテーマパーク「ヴィヴィッドステージ」に遊びに来た。ここは一口に言うと「現実(リアル)と仮想(ヴァーチャル)の融合(フュージョン)」が謳い文句だが、3Dシアターやモーションキャプチャーを使った参加型イベントが目玉なぐらいで、それ以外はよくわからない仮想水族館だのポリゴン動物園だとか、初めて見た時ぐらいに楽しめそうなものしかない。
 そのテーマパークで、俺は参加型イベントに出た。これは一番の人気アトラクションで、事前に予約が必要になるほどだ。まず前もってカードを購入して施設内のゲーム機で経験値を稼ぎ、カードに様々な付加価値をつける。そしてそのカードを使って自分の「分身」を作りだし、自分の動きをキャプチャリングして相手と戦うのだ。いくらこちらの動きが良くてもカードのデータが貧弱だと負けるし、逆にカードのデータが豪華でもこちらの動きが悪くて生かし切れなければ、負ける。このあたりの駆け引きが楽しいのだ。
 そして俺の番になった時、対戦相手は女の子だった。俺と同じぐらいの身長、赤茶けた髪。それですぐに幼馴染みの女の子だとわかった。俺は自分のブースから彼女に向かって親指を立ててみせる。すると彼女も顔を上げてこちらを見て……。でも。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 121