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作品名:言凝、幸わう星 作者:ジン 竜珠

第28回 第三章・五
『それでは、あの事故による死者は二人なんですね?』
『ええ。ただ、唯一、救出された十歳の少年も、かろうじて息はありましたが意識はなく、時間の問題です。今夜もつかどうかというところでしょう。三度の火傷が全身の二割以上、二度の火傷も含め、火傷(かしょう)がほぼ四割に及んでいましたし、血圧も計測不能なまでに低下していました』
 新聞記者かテレビのレポーターか、そんな感じの若い男性が、医者と思しき白衣を着た、かなり年のいった禿頭(とくとう)の男性に話を聞いている。場所はどこかの病院、その診察室のようだが、どういうシチュエーションなのか、さっぱりわからない。何せ、再生が始まった瞬間、問答が始まっているのだ。それも何をテーマにしているのか明らかにしていないものだから、何を話しているのか、まったく理解できない。
 DVDは約五分間。何度か繰り返して見たが、結局、訳がわからないままだった。かろうじてわかったのは、何かの事故があり、生存者は皆無で、それについて遺族が補償を訴えている、ということだろうか。
「いや、それもどうかな?」
 適当に編集した形跡があるので断片的にしか情報がないのだが、その「事故」とやらの犠牲者は二人、最終的には三人になるらしい。ただ、他にも事故に巻き込まれた人が三人ぐらい、いたはずだという目撃証言があったとかで、そのあたりの調査や保証をしっかりとするべきだ、みたいなことを言っているような気がする。
「わかんねえな」
 あの男は、これを俺に見せて何をしたいんだろう。
 俺が首を傾げた時だった。
「よう、アーヴィング。ちょっといいか?」
 襖の向こうで声がした。
「はい、いいですよ」
 声の主は真雄さんだ。居室にしているのは、俺は二階の和室、真雄さんは二階の広めの和室で、どちらも元は旅館時代の客室だ。位置的には一部屋挟んだ格好になる。
「ようっ。ちょっと話が……て、なんだなんだ?」
 入ってきた真雄さんは、いやらしい笑みを浮かべた。
「エッチなDVDでも見てたのか?」
「違いますよ」
 俺は憮然としながら画面を見せた。
「よくわかんないけど、そういうのじゃないです」
「どれどれ」
 そう言ってニヤニヤしながら画面をのぞき込んだ真雄さんだけど、見る見る表情が強ばっていった。そして。
「お前、これ、どこで!?」
 なんか焦っているような怒っているような感じだ。これを入手した本当の経緯を言うと、烈火の如く怒り出すんじゃないか、そんな気配さえある。だから、俺は思わず嘘をついた。
「知り合いから、もらったんですよ」
「知り合いだあ?」
 俺を睨みつける真雄さんからは、敵意すら感じる。俺は気圧されながらも頷いた。
 しばらく俺を睨んでいた真雄さんだけど、画面に視線を戻して言った。
「アーヴィング。お前の交友関係を信用しているし、口を出すこともないと思う。だが、一言言わせろ。その知り合いとは縁を切れ! 今後一切、何を言ってきても、とりあうな!」
 吐き捨てるような口調だ。
「は、はい」
 真雄さんに言われるまでもなく、あんな奴とはこれっきりにしたい。でも、今、俺が答えたのはそのせいじゃない。真雄さんの気に呑まれたのだ。
 まだ何か言いたげな真雄さんだったが、不意に携帯が鳴ったので、言葉を飲み込んだ。


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