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作品名:言凝、幸わう星 作者:ジン 竜珠

第19回 第二章・九
 俺は慌ててポケットの携帯に手を伸ばした。しかし。
「圏外!? なんで!? 学校は圏内のはずなのに!?」
 表示は無情にも「圏外」となっている。念のために適当に番号を呼び出したが、通話音はおろか、まったく音がしない。
 俺は携帯をしまって、再びヤツを睨む。今日は、リューカがいない。あんなのでも、言霊使いらしいから何とかなりそうだけど、いない以上、救けを期待できない。
「だいたい、なんで誰もいないんだよ?」
 焦りが俺の口をついて出る。呪術師じゃなくても、誰かがいれば騒ぎになって、この場が何とかなりそうなのに。
「今回は、この間みたいな結界とは訳が違うからなあ。誰も救けには来ないぜ」
 自信たっぷりに幻心が言う。
「お前みたいな一般人に専門用語使っても、理解できねえだろうが、一応、説明しといてやる。自分がどういう状況なのかわからないと、気持ち悪いだろうからな」
 一歩一歩、幻心は俺に近づいてくる。
「ここはな、『幻創(げんそう)空間』ていうところだ。平たく言えば次元の隙間みたいなものだな」
 幻心が手にした呪符を振ると、光の軌跡が大きな文字を空中に映し出した。「幻創空間」と書いてある。
「この世界はいくつもの次元というか、世界みたいなものが重なり合っている。世界といっても、住人がいるとかそういうのばかりじゃない。ただ『あるだけ』の世界もある。そういう世界の一つをこじ開けて、そこの一部に別の世界の要素をコピーしてやる。あるいは、自分自身がイメージする世界でもいい。それが『幻創空間』だ」
 俺は奴に追いつめられる形で、廊下の隅の壁に背をついた。
「幻創空間の利点の一つは、場所を問わないということだ。例えば、俺はこの学園からは随分離れたところにいた。そこに幻創空間を作り、世界を伸ばしてこの学園にくっつけた。そして小僧、お前を取り込んだ。そして、ここには何人(なんぴと)も入って来れない。そもそもこれに気づける奴なんてそうそういるわけないしな!」
 全てが理解できた訳じゃないけど、ここが現実の世界じゃないというのはわかった。そうでないと、この異常な状態が説明できない。
 ふと右手の方を見ると、階段が見えた。上り階段と下り階段だ。幻創空間とやらに取り込まれるまでは、俺は四階にいた。そこに一年生の教室があるからだ。俺はどうするべきか……。
 考えるまでもない。ダッシュして下り階段に向かった。二段抜かしを二回やったあと、そのまま踊り場に飛び降りる。そして身を翻して残る階段を一気に駆け降りる。
 三階には二年の教室や、一部の特別教室があるが、俺は無視して階段を飛び降りた。
 二階は三年生の教室。ここも無視する。教室だったら、どこも条件は同じような、そんな気がしたのだ。
 そして一階。ここには職員室や校長室、その他特別教室なんかがある。俺は手近にある部屋の引き戸を開けた。理科室だった。
「誰もいない。クソッ!」
 教室と違って、もしかしたら、誰かがいるんじゃないかと少しは期待したんだが。毒づいて、俺は駆け出した。手当たり次第に扉を開けていくが、やはり誰もいない。中を確認しながら、俺はあることに気づいた。部屋の並びが、現実の校舎と違う。それだけじゃない。何となく、間取りも違う感じだ。理科室が広すぎる。


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