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作品名:言凝、幸わう星 作者:ジン 竜珠

第13回 第二章・三
 今、修平が言った「青いカモメ」は最近できたレストランだ。新市街の海の見える高台にあり、カップルや観光客に人気のスポットになりつつあるらしい。ランチタイムのバイキングが、人気メニューだそうだ。俺も一度は行ってみたいと思っているが、バイキングは、なぜか平日しかやってない。そして、「青いカモメ」と高校を往復するには、昼休みは短すぎるのだ。
「いいじゃん、午後の授業フケたってさ。月曜なんて、エンジン掛かんねえんだからよ」
 お前は曜日に拘わらず、平日は放課後しかエンジンが掛かんねえだろうが、と軽口を叩いたところで、もう一人やって来た。
「皇を悪の道に引きずり込むな」
 そう言って、仏頂面で俺の前に立つ。肩までの長髪を真ん中分けにしている、ちょっと線の細い長身の色男は、高校に入ってからの友人で、大海崎(おおみざき)景(けい)だ。親父さんが刑事だとかで、そのせいでもないんだろうが、とにかく堅物。でも不快ではなく、俺たちは不思議とウマがあった。
「高瀬は放っといて、もしよかったら、学食で食わないか? 新メニューが入ったらしい」
「また何か入ったのか? 節操のない学食だな」
「それだけ競争が激しいということだろう。今の時代、学生に媚びるのも、学校出入り業者の生き残り戦略の一つだろうな」
「世知辛いな」
 俺は溜息をついた。
 これから社会は超少子化時代に突入する。そんなわけで、学食といえど生徒のニーズに応えねばならぬ、とPTAあたりのお偉いさんが、のたまったらしい。そこで競争入札することになったらしいが、どうせなら生徒たちにうけるメニューを用意できる業者を、となったらしいのだ。
 そこで現在ウチに入っている業者が奮起。半年前からやたらとアンケートをとって「メニュー改善」に努めた結果、「五目焼きそば」「お好み焼き」といった定番から「バイキング」「スパゲッティ・カルボナーラ」という変わり種、はては「チョコムースケーキ」などという、変化球どころかビーンボール寸前のものまで、「試験運用」という断りがあるものの、メニューに並ぶ始末。さすがに生徒たちの大半も「やりすぎだろう」と呆れかえっているのだが、大人たちには、それがわからないらしい。
 そういえば、ウチの学食には名物がいくつかあった。そのうちの一つが「A定食・B定食」だ。A定食はご飯とみそ汁、B定食はパンとスープで、おかずは日替わりだ。しかし多少はアレンジが加えてある。例えばA定食がエビの天ぷらなら、B定食はエビフライ、メンチカツがA定食のおかずなら、B定食はハンバーグといった感じで、逆の時もある。
 しかし、味に変化がない。エビの天ぷらなのにエビフライの味がしたり、メンチカツ、ハンバーグともに焼き肉の味だったり。すごい時には、何を食ってもエビフライの味だった週もあったらしい。ここまでくると、いっそのこと、どんな調理をしているのか興味が湧いてくる。噂では、コストを抑えるためにクズ同然の安物を仕入れて、味を調えるために合成添加物だの調味料だのをぶち込んでいるので、そのうち保健所の抜き打ち査察が入るんじゃないかということだが、そんな業者に学食を任せてもいいんだろうか。
 それはまあ、別の話だからおいといて。
「いや、今日は購買でパンでも買って食うよ」
「そうか。俺は学食にしよう。そういうわけだ、高瀬も学食につきあえ」
 そう言って景は修平の首根っこを掴む。
「ちょっと、待て! OLのお姉ちゃんたちが、俺を待ってるんだ! 俺の話術とアーヴィングのルックスが有れば、入れ食い間違いないって!」
「学校とは健全なる精神を養う場でもある。一度お前にはそのあたりを叩き込む必要があるな」
「待って下せえ、お代官様! うちには十歳を頭(かしら)に食べ盛りのガキが五人……」
 訳のわかんないことをほざきながら、修平は引きずられていった。
 物騒な光景だが、まあ、あの二人もウマが合うからな。コミュニケーションの一環だろう。


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