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作品名:言凝、幸わう星 作者:ジン 竜珠

第12回 第二章・二
 月曜日の昼休み。昼飯時だ。弁当持参の女子たちは机を寄せて島を作っている。
 俺はというと、今日は弁当を作り損ねたので、どうしようかと思っている。すると、同じクラスで中学からの悪友、高瀬(たかせ)修平(しゅうへい)がやって来た。
「よう、アーヴィング。今日は弁当じゃないのか?」
 俺は頷いた。なるべく俺は弁当を作ってくるようにしている。三日に二日ぐらいだ。主な理由は経済的なものだが、まあ、趣味も多少ある。
 で、今朝は弁当を作るつもりだったのだが。
「ちぃーッす!」
 と、午前六時十五分という早朝に、リューカがやってきたのだ。
 彼女、フルネームは「リューカ・ダイン」というそうだ。本名だそうで、どう見ても日本人なんだが、日系の三世か四世なのだろう。
 それはともかく。
「何をしに来たんだ、お前は?」
 五時半には起きていた俺だが、朝っぱらから妙なテンションで闖入してきた奇天烈な来客に、不快感を隠せず言った。
 俺の問いに、リューカは一枚の紙切れを見せる。
「土曜日に襲ってきた奴の身元が、わかったんで、報告に来たのだよ!」
 と何故か自慢げに胸を反らす。
 コイツのキャラが、よくわからん。軽い頭痛でこめかみを押さえる俺に、リューカは持参したA四の紙切れを俺に手渡す。
 インターネットから拾った情報らしく、紙の上端にアドレスが入っている。Vサインを出したあの男が微笑んでいる大写しの写真に、丸文字ゴシックのコピーが入っている。
「蔵間(くらま)幻心(げんしん)? こいつの名前か? えーと、『あなたのお悩み、解決いたします。幻心に、お任せッ! 頼れる咒(まじな)い師、蔵間幻心のハイパースピリチュアル・ワークス』……。妙に明るいキャラだな、こいつ」
「マスミが、気をつけとけって。ところで、いい匂いだねえ」
「ああ、朝飯作ってたからな」
「ふうん」
 そう言うマスミの口の端からは、ヨダレが滝の如く流れ出していた。
「……食うか?」
 うっかりそう言ったのが、運のつきだった。結局、朝飯だけでなく、弁当のおかず用に作り置きしておいた総菜まで、食い尽くされてしまったのだ。
 まあ、「うまいうまい」って言われたら悪い気はしないけど。
 そんなわけで俺は今日は弁当じゃないのだ。
 ちょっとばかり苦い記憶を彼方に追いやりながら俺は答える。
「ああ。今日は弁当は作ってこなかった」
「そうか。弁当じゃないなら、新市街の『青いカモメ』へ行こうぜ。バイキングが人気なんだよ」
 そう言って、特にOLさんにな、と意味深な笑いを浮かべて付け加える。
 ちなみに、ここ葦原中津市は大きくわけて四つのエリアでできている。一つは、やや山よりで東よりの住宅街、通称「中津(なかつ)町(まち)」。このエリアに俺の自宅がある。もともとこの辺りは中津(なかつ)町(ちょう)という町だったのが、平成の大合併で葦原市の一部になったのだ。その時に市の名前も「葦原中津市」になった。二つ目は南部の海浜地区。海沿いのエリアで、旧葦原市の住宅街、工場、ショッピング街などがある産業地区だった。ちなみに俺が通う、ここ「葦原(あしわら)日和(ひより)見(み)台(だい)高校」もこのエリアにある。三つ目は旧市街。商業の中心だったところだ。海浜地区のほぼ北部に位置する。四つ目が新市街で、この十数年で開発が進んだ地域だ。旧市街の一部から中津町の一部と海浜地区、そして西北部の未開発だった山間部に向けて伸びて、と、葦原中津市のほぼ西側全域をカバーしている。


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