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作品名:神氣學園滅神傳Reboot・ANOTHER 作者:ジン 竜珠

最終回 壱之傳 学府・肆
「まさか、とは思うが」
 天宮瑞海は、改めて古事記(ふることふみ)を読み、自分の知識と照らし合わせ、先代宗師の言葉をそれに組み合わせていた、
「古来、我が国では、K(ケイ)の音は男、M(エム)の音は女を意味する。つまり…」
 男は「OTOKO」であり、女は元々「OMINA」。彦(比古)は「HIKO」であり、姫(比売)は「HIME」。息子は「MUSUKO」、娘は「MUSUME」。
「王は、古くは『きみ』と読んだ。つまりは『KI』と『MI』。伊弉諾尊、そして伊弉冉尊は、元々の読みは『イサナキ』と『イサナミ』、つまりは『イサナの男王と女王』。そして、『イサナ』とは…」
 手に取るは、本邦の神典ではなく、異国の神話。
「…異国の破壊神、シヴァの異名・イーシャーナ…」
 ヒンドゥー神話の主要神であるシヴァは、その顕れの多様性により、様々な「相(ムルリティ)」を持つ。この「相」とは、エネルギーの状態を表す。それを、ユング派の心理学者なら「ペルソナ(仮面)」というかも知れない。そして、仏教に取り込まれる際、その「相」が、それぞれ別の神格として取り込まれているのだ。例えば「マヘーシュヴァラ」は「大自在天」として、「マハーカーラ」は「摩訶加羅天」「大黒天」として、「ニーラカンタ」は「青頸観音(しょうきょうかんのん)」として。
 その中の一つ、「イーシャーナ」は「伊舎那天」として。
「なれば、黄泉津大神は、シヴァの后、パールヴァティの暗黒面、恐るべき死の女神、カーリーか」
 カーリーは、魔神たちを滅ぼす女神であると同時に世界を滅ぼす女神でもある。だとすれば、あの御柱の中にあるのは、死の女神という生やさしい表現ですまない、まさに世界を滅ぼす女神なのだ。
 もちろん、これは瑞海の思索に過ぎない。だが、確かにシヴァと伊弉諾尊、パールヴァティと伊弉冉尊は共通点がある。たとえば、オノコロ島を生み出した「天沼矛(アメノヌボコ)」は、創造神としてのシヴァが持つ三叉戟(さんさげき)、あるいは直接的にシヴァのリンガ(男性器)を象徴し、伊弉冉尊は火の神・迦具土尊(カグツチノミコト)を生んだことが元で身罷った(みまかった)が、パールヴァティの前世であるサティーも炎の中で世を去った。伊弉諾尊は妻神(つまがみ)を死に追いやった迦具土尊を斬り捨てたが、シヴァもサティーの死が関係する場所で、火の神アグニを蹴り倒した。
 そもそも、シヴァを象徴するシンボルの一つは蛇。そして神仏習合観ではイザナギ・イザナミの代でこそ人身だが、それまでの神々は蛇体を持つ、あるいは蛇をシンボルとする姿で描かれているのだ。
 すなわち。
「古事記の神代(じんだい)の巻(まき)は、異国の神話を描いている。であれば、事態(こと)は我が国のことだけでは収まらぬやも知れん…」
 確かに天宮流神仙道は、実質的に神秘道であり、垣根のない「この世界」においてはこの国にだけ限定されるものではないと、瑞海は自負している。実際、その数は少ないが、他国の籍を持った者も、弟子の中にいる。
 だが、こと世界の神秘学となると、天宮流だけで対応できる、とまではいいきれないところもある。
 もしかすると、他国にも助けを求める、そんな事態が、いずれ来るのではないか。
 瑞海は、深く思っていた。
 時に、代は、まさに「平成」に移ったばかりであった。


(壱之傳 学府・END)

・「え? なんで古事記とヒンドゥー神話が同じなの?」と思われた方も多いのではないか、と思います。このあたりは、世界各地の神話には共通点が多い、というのを悪用した私の妄想と思っていただければ(笑)。実は、私のフィールドは元々、ヒンドゥー神話なんですね。かれこれ三十年近い、つきあいになるでしょうか。そこから古事記に入ったので、「あれ? 結構、共通点があるな」とか思ってしまったわけです。本編以外にも、例えば「ラーマーヤナ」で、ヒンドゥーの主要神の一柱であるヴィシュヌの化身(アヴァターラ)の一つ「ラーマ王子」の后「シーター(パ〇ー! じゃないですよ)」と、コノハナサクヤヒメの逸話とか、そもそもオノコロ島誕生の話は、ヒンドゥー神話の「乳海撹拌」みたいだとか。長い話なので、興味がおありの方は検索してみてください。それで「もしかしたら『中国経由』じゃなく、直接、入ってきてんのか、ヒンドゥー神話?」とかって思っちゃったわけですよ。
 んで、昔、この自説を某所で展開したら、案の定、一笑に付されましたが(裏付けとなるデータが少なすぎましたからねえ)。
 実はこれ以外にも、ヨーガやチベットに伝わる、ある種の瞑想法が、やっぱり中国をスッ飛ばして日本に入っている形跡があるんですが、これはまだまだ検証が足りませんし、余談なので、このあたりで。

 ちなみに、このテキストは現存していたもの。前回は「ネタバレ」を防ぐ為に「小出し」にしてました。
 さて、ここで、この展開をしたという時点でお気づきとは思いますが、本編ではヒンドゥー神話は絡んでこない予定にしてます(前回投稿時は、そのまま直球でしたが)。一応、日本神話・古神道・神仙道なんかがメインで話を進める予定です。


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