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作品名:境界線 作者:北川 青

第1回 内面
 枯れ葉を一枚つまんでつぶす。破片はほろほろと風に流されて、冷たいアスファルトに迎えられる。

――アスファルトと枯れ葉の対話は可能か?

 アスファルトと枯れ葉に意識があるのかどうかはさておき、この異なるもの同士の対話を考える。枯れ葉は私にされたことを、アスファルトに訴える。アスファルトはそれに対してどう答えるだろう。「そりゃあ、君が彼女の頭にのっかったからさ」と破片を責めるでも、「それは気の毒だ。君は少しぶつかってしまっただけなのに」と同情するのも。何も不自然ではない。ひとつ得心がいく。

 ――つまり、人間も同じなのだ。違うもの同士で、好き勝手にごちゃごちゃと。アスファルトと枯れ葉と、それを観察して勝手に考えている私のように、みなその中身がてんでばらばらしっちゃかめっちゃかな癖に分かり合えるだとか考えている。だから破綻してしまうのだ。

 ゆるゆる灰色の雲が北へと向かう。そうか、今日は南風なのかとぼんやりと考える。あの白い雲の天辺はきっと太陽に照らされて白く煌いているに違いない。そうして、空気に融けていくのだ。風の吹くまま流される雲の形が、なんだか瞼のように見える。流線型の灰色の濃淡。中には水をたっぷり隠し持って、緩やかに北へと進んでいる。
 その果てに何があるのか。涙の雲はいつか消えてしまうのか、それとも台風になるのか。私は知らない。いく末なんて誰も知らない。どいつもこいつも知るはずがない。乱雑な広告、悪口雑言垂れ流す群集、孤独ぶってそれらを見下す自分。知恵あるように振舞う愚者と、鼻水すする世捨て人。
 違うもの同士で、皆同じだって声高々に叫ぶ人々を見下した。そんな自分だって見下した。そして、それはそれで、別にいいのだ。

 生ぬるい南風が吹く。もうすぐ冬が来る。本当に? それから? 誰も知らない次にいるのだ。


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