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作品名:Kazuma's Birthday 2018 作者:

最終回 1
「ただいま、莉音ちゃ……っ」
 靴を脱ぐために、今朝家を出るときには持っていなかった大きな荷物を下ろそうとしたところで、首に抱きつく、愛しい匂い。不意のことに、とっさには動けない。
「……おかえりなさい、一磨さん」
 ささやくような声とともに、あたたかい吐息が耳にふわりとかかる。まずい、ちょっと顔赤くなってるかも。
「うん、ただいま」
 両手が塞がっていなければ、今すぐにでも抱きしめて、それで……
「あの、えっと……お疲れさまです。荷物、重たいですよね。持って行きますよ」
 俺の勝手な妄想は、ゆっくりと解かれた腕とともに消えていった。これだけの荷物を持っていれば、仕方ないか。
「ううん、平気だよ。自分で持って行く。それより、寒いでしょ。身体冷やしたら大変だよ、早く戻って」
 莉音ちゃんにとっては迷惑なお節介かもしれないけど。そう思いながら、急いで靴を脱ぐと、リビングへ向かった。
「でも、一磨さん……」
「でもじゃありません」
 行き場を失くしたようにふわふわ動く両手が面白くて、つい頬が緩んでしまう。壁際に荷物を全部置くと、今度は後ろからぎゅっと腰に抱きつく莉音ちゃん。
「どうしたの?」
 巻きつく腕に手を添えて、軽く首を回して見下ろす。
「もう、今日はたくさん聞いて、聞き飽きちゃったと思うんですけれど……」
 そう言ってこっちを見上げる彼女の、上目遣い。反則、って言っても、きっと小動物みたいに首をかしげるだけなんだろうな。
「……お誕生日、おめでとうございます、一磨さん」
 言い切って、はにかむ彼女がまた可愛くて、身体ごと振り返るとそのまま抱き上げた。
「わ……お、下ろしてください! 重いですよ!」
「どうして?」
「どうしてじゃなくて……」
「誕生日だから、俺のわがまま聞いてほしいんだけどな」
「っ……」
 頬を赤く染めながらも、首に腕を回してくれる。そんな彼女の幸せそうな表情を見上げながら、胸が温度を上げるのを感じていた。


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