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作品名:もう一度、抱きしめて 作者:

第2回 一目ばかりの逢瀬
「……さん。……ち、さんっ、遼一さんっ」
 女性の声が耳元に繰り返し響き、目が覚める。半ば眠ったままの意識がゆっくりと浮上する過程で、まずまぶしさを捉えた。光。白。それから感じる……懐かしさ。
 数度瞬きを繰り返す。
 段々と視界がクリアになりようやく把握したのは、白くうつったのは天井で、窓から入った光を反射したためにまぶしく目に映ったのだということ。この光景は、初めて見る景色であるということ。
 では、懐かしさは……
「遼一さん!」
 再び耳元に聞こえる、女性の叫ぶような声。驚喜のあからさまに感じられる、どこか耳に馴染みのある声だ。
 やおら声の主へ目を向ければ、くっきりと目の下に刻まれた隈に、充血した二つの眼。ギンギンに見開かれた双眸は、薬の中毒者を想起させた。
「よかった……目を覚ましたんですね」
 心底嬉しそうな声……しかし掠れているのがはっきりと分かり、さらに彼女の目つき顔つきから、無意識にも警戒を抱く。
 しかしこの女性はそれに気づいた風もなく、左の手を握ってきた。華奢な両手は、微かに震えていた。
「もう起きないのかと……よかったです。丸三日も眠っていたんですよ!」
 耳に心地よい声……しかしこの声には聞き覚えがない。記憶力は悪い方ではないし、知人であればなんとなくでも覚えがあるはずで、したがってこの人は、初対面であろう。
 だが、彼女の様子からして、以前から自分のことを知っていたような調子だ。女性の笑顔にそっと眉をひそめた。
「本当によかった……遼一さん」
 こちらの表情が見えていないのか、安心しきったような顔で、甘えるように首に腕を回してくる。妙なほど馴れなれしい……疑ぐりながら起き抜けの頭をはたらかせ、この女性について考察する。相手と同じように、背中に腕を回しながら。
 少なくとも、知り合いではあるはず……名前に「さん付け」とくると、仕事上の関係よりも近しいはずで……
(……っ痛)
 しかし、そこまで考えたところで激しい頭痛に襲われる。一瞬にして痛みが脳を支配し、あらゆる思考が取り去られていった。
「遼一さん……?」
 まばゆい世界だけが、再び目の前に広がった。
 光。白。音のない、ただまぶしいだけの世界。
「りょういちさん!」
 一瞬前に、別の経験をしていたような気がするが……
 ……記憶に残っているのは、ただただまばゆい世界だけ。まぶしく光り輝く、白の世界のみ。
 そして再び深い闇へと突き落とされた。


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