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作品名:もう一度、抱きしめて 作者:

最終回 Epilogue
「やっぱり涼しいですね、東北は」
 澄んだ空気を深く吸い込むと、吐き出す息とともに遥香はそう言った。
「……って、初めて一緒に来たときにも言いましたっけ?」
 くすっと笑ってこちらを見上げてくる婚約者に、ごく自然に目を合わせながら笑顔を返した。
「お前は何回来ても、同じことしか言わなさそうだけどな」
「ちょっ……それ、どういう意味ですか」
「さあな」
 前へ向き直り、足を踏み出す。
 新花巻駅へ降り立った俺は、あの頃と同じ匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
「もう、やっと記憶を戻したばかりなんですよね……? 遼一さん、歩くの速いです……」
 駆け足でやっと追いついた遥香が隣に並ぶのを、そちらへは目を向けず意識すると、歩調を緩めた。
「思い出を確かめられると思うと、落ち着くって言ったんだよ」
「え……?」
 信じられなさそうな声を出し、もう一度同じ言葉を聞こうとする遥香を、手を取って諌める。
 まだ伝えきれていない感謝は、今夜全部伝えようと密かに決意すると、「イギリス海岸」を目指した。


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