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作品名:刻み小鴉‐夢魔の絡繰り‐ 作者:鈴木翔太

第4回 4


 鋭利な切っ先のごとき眼差しを、名乗りをあげた驫駕に小鴉丸は突き刺した。
 彼が登場したことで、食事処のなかに漂う雰囲気は確かなる移ろいをみせる。
 料理をなしていた店員や昼食をとっていた町人の動作が止まるということは、驫駕に対しみんなが、それらの行為の続行が無礼に相当する人物だという認識を有している証だ。すなわち、この男は鶴町を治める諸把に仕える者のなかでも、特別な位置にある高官であると判断するべきだろう。
 小鴉丸のそうした推量を、この場に居合わせた娘、おとわは読み解いていた。
 食材を卸している最中に、町じゅうのカラクリを製造した驫駕が来店しただけでも、こちらにすればじゅうぶんな驚きであったが、それまで楽しげな語らいを深めていた浪人の通り名は、それ以上の驚きをおとわに生じさせた。
 この地に根づく豪族、和田一門の息女・諸把が夫に先立たれてからといもの、流れてくる男たちの会話をそれとなしに聞くことは幾度かあった。
 旅の武芸者が話題にとりあげるのは、やはり諸把を娶るだけの業がある剣士は何者であるかといったものばかりであり、挙げられる使い手のなかにはいつも、〈刻み小鴉〉と〈捌き小狐〉の名がふくまれていたのである。
「あの人たちなら、もしかしたら――」
 どこか剣呑な風情に、声をひそませはしたけれど、期待の言葉を発し終える。
 かつての活気が消えたこの町を、あの者たちなら救ってくれるかもしれない。


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