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作品名:★Freshness(フレッシュネス)★ 作者:鈴木翔太

第15回 15


「そこのお前たち! 作戦開始直前だというのに、何を気を緩めている!」
 すでに戦闘態勢に心身を移らせたリジェナは、凍てつくような鋭利な眼差しでファルシオンをはじめとする隊士たちを睨み据え、能力の高さにあぐらをかき、戦地に降り立つ緊張感の足らない全兵を叱責した。
「我々はこれより、この世界に生きるすべての命に直結する任務に臨むのだ! そのことを自覚できぬ半端者は、我が部隊には不要!」
 リジェナは基本装備である振動刃サーベルを抜き取り、上方にかざしながら、絶えず言葉を紡ぎだす。
「敢えてこの場で問う! お前たちは機構の意のもと、戦地に集いし刃か!?」
 隊長の気迫に満ちた問いかけに、隊士たちは一拍の間を置いて、口々に答えを叫び返した。
「も、もちろんです! リジェナ隊長!」
「家族や友人、そして機構の礎の一片となるため、自分はここにおります!」
「安らかなる社会、その歯車として、存分に働いてご覧にいれますぞ!」
「結晶体を捕獲し、我々が新たなる機構の主力であると証明しましょう!」
 結束へ向かう隊士たちの意志に、リジェナはわずかに朱唇をほころばせると、サーベルの切っ先を進行方向に振り下ろし、声高らかに開戦を宣言する。
「であれば、研ぎ澄まされし刃よ! その歪みなき心を己が働きにて示せッ! いざや、決行ッ!!」
 リジェナの発する声に叫ぶように応じる隊士たち。
 そのうちの何名かは操舵室から飛翔艇細部にアプローチをし、備えられている装置を森へ放つための準備にとりかかる。
 彼らのなめらかで無駄のない操作で、今回の作戦にあたり搭載された装備が、展開される噴進弾格納部位(ふんしんだんかくのうぶい)より顔を覗かせる。
 ――ソレは一見しただけでは、眼下に広がるニルゴア森林を攻撃せんがための破壊兵器に思えるが、その実態は、機構の技術者が幾多の挫折と困難のすえ作りだした、小型の高周波音響発生装置(こうしゅうはおんきょうはっせいそうち)である。
 そもそもこの装置は、進化によって狂暴性の増した鳥獣どもを街に踏み入らせないために開発されたもので、人には聞きとれず無害な周波音を市街ゲートから意図的に発生させ、市民の安全を図るのが目的で製作されたものである。
 リジェナはかねてから、この装置を対従牙兵器として活用できないかと考えており、その旨を技術開発部に提言したところ、小型化の研究が開始され、晴れて今回の任務に実装されることとなったのだ。
「高周波音響発生装置、発射準備万全です」
「良し。なれば全弾掃射にかか……――ッ!?」
 リジェナが射撃指示の号令をかけようとしたとき、視界に信じられないものが映り込んだ。
 双眸が捉えたのは鳥である。
 幾千と連なるおびただしい数の鳥たちが噴進弾格納部位に向けて一切の怯えもなしに突き進んでくるという、にわかには信じがたい光景が風防を隔てた視界のなかで巻き起こっている!
 敵に搭載された兵器が肉体破壊を目的としたものではない、と知る由はない。
 つまるところ鳥たちは、自身の安全などまったく顧みず〈エクスキャリバー〉と交戦する心積りであるらしい。
 自分は敵の文字どおり命懸けの戦法に、身体じゅうの毛が 粟立つのを感じた。
 頭の片隅に浮かびあがる弱卒の姿を払いのけ、操舵室に拳を打ちつけたなら、動揺を気取られぬように隊士へと指示を下す。
「奴らにかまうなッ! 躊躇なく全弾掃射せよ!」
 激しい口調に隊士は少々身をすくませつつ、高周波音響発生装置を地表へ向け撃ち出した。しかし鳥たちは射出する兵器に果敢に挑みかかり、たとえわずかであろうとも装置の効力を和らげようと飛び込んでくる。
 心が痛んだ。なぜそうまでして結晶体を護るんだ。差し出し降伏さえすれば、このような犠牲も出ないだろうに…………っ!


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