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作品名:★Freshness(フレッシュネス)★ 作者:鈴木翔太

第11回 11


「悪いな、アクス。わざわざ送ってもらって」
 仕事仲間が運転する一輪型自走機関に設置された座席から、腰元に手をまわすようにして、フレイルは話しかける。
 天空を志し飛翔艇を求めるフレイルにとって、地を駆る自走機関は少々地味な印象があったものだが、こうして実際に体験するや、自らが旋風になったような疾走感は実に心地よく痛快である。と、認識をあらためた様子だ。
「かまいませんよ、フレイル。どうせ趣味のドライブのついでですから」
 少年の高揚感を背中で感じながら、アクスはさらに自走機関を加速させる。
 アクスの意思のままに操られる機体は、もうすぐ所長を乗せて、三番街を通過しようというところだ。
「――とはいっても、僕は無意味な親切を嫌うタイプですので、この行為によるなんらかの見返りは、当然ながら求めますけどね」
「建前から本音に移るのが早すぎないか、今の? 意外とアクスって、自分自身に嘘をつかない性格してるよな」
「そんなことはありませんよ。……フレイル、貴方はもっと相手側を疑うことを覚えてください。心にもない甘言で貴方を惑わせる者が、いずれは現れないとも限りません」
 フレイルのあまりに純な言葉に、アクスはたしなめるような口調で返答した。
 それというのも、幼馴染ほどに表立ってでこそないが、アクスもまた、少年を大切に扱わねばと考えているためだ。
 早くから大人に混じって英才教育を授かり、競争ばかりの幼少期を送っていたアクスにとって、現在勤めている事務所は地球上で唯一心から安らげる憩いの場であり、その所長であるフレイルの存在に誰よりも自らが救われていることを、アクス自身が胸の奥底で理解しているのである。
「なんだかなぁ。どうも俺って、みんなから頼りない奴だって思われてない?」
「そんな、まさか。貴方は頼りないというよりは、むしろ器が大きすぎることが問題なのですよ」
「? それってなにかマズいことか?」
 心底不思議だ、と言わんばかりの相手の声に、アクスは思わず頬を緩めた。
「まったく、この人は」と思う一方で、こうした裏も表もない性格だからこそ、彼のもとには住民から仕事の依頼が舞い込むのだなと、妙に納得して。
「貴方は数多くの考えを肯定し、寛容に受け入れてしまう人ですからね。そばで見ているほうからすれば、少しくらい警戒心を持て、と言いたくもなります」
 ――事実、フレイルはダグラスに頼み込んで自宅を大改装してもらってから、特に採用試験もなしに三日間で、アクスとナタルとを雇い入れることを決定した少年だ。心配するなというほうが無理な話である。
 自分とナタルが有害な悪人でなかったから良かったものの、まかり間違えば、立ちあげて数日で事務所をたたむことになっていたかもわからない。
「俺だって、誰彼かまわず信用してるわけじゃないさ。考えだってあるんだぜ」
「……まぁ、フレイルがそういうなら、僕は信じて貴方の脇を固めるだけです」
 本心半分、皮肉半分に答えたアクスは、操縦位置からでは所長の眼に映らないことを承知のうえで、得意技の意地の悪い表情を浮かべた。
 自走機関は一番街をも走り過ぎて、あと十分とかからず、ガラクタ山へと到着しようというところである。


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