小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:SとFの誤謬 作者:鈴木翔太

第5回 5


 ファントムが発動させている、禁孔(きんこう)と呼称される穴から観測した下の世界≠ノは、豊富な生命がひしめき合って暮らしている。
 高度な知性をもち、社会的な共同体を築いている者たちをざっと選出しても、どんな相手が此処まで到達するかは予想がつかない。
 創世種が自身の精神体に似せて作り出した人間は、数においてはピカイチだ。作り主の愛情を受けたことで、たがいの魂魄がひとつの珠となる男女――いわば運命のふたりが結ばれたとき、授けられた子供には珠辰(しゅしん)なるものが付加されるのも特徴的である。
 珠辰とは、当初から創世種に与えていた精榛(せいしん)というものの亜種。
 そもそもにおいて、位相世界を創造したのは根頓を発展させんがためであり、智覚書に記載される生命の成長過程は、根頓へと還元されなくては意味がない。そうした飛躍への仲介となるのが、根頓から分離した天外の力たる我々と住人を繋げる$ク榛の機能だ。
 住人を補助しようとする役割は、守護霊もしくは守護天使などと言い表され、審影が魄に付随することで真逆の性質で出現するように、精榛のほうは魂に付随することで真逆の性別を保有する。男性の女性面であり女性の男性面。複合的な心理を経験させることもまた、向上のためであるらしい。
「人間は基本形だからバランスいいけど、突出したところがないからダメかな」
「そうともかぎらないぞ。実体のない精榛を目視できているのは、人間だけだ」
 精榛を視れない者は、覚醒児となれるだけの段階まで行きつけない。ときおり無自覚に天外の力と繋がる≠アとで、現世の向こう側≠フ源泉である根頓を悟り、自ら接続する鍛錬を積んだすえに、ようやっと視えてくるものが精榛だ。
 位相世界の住人の魂には意識の下層において更に深い層が存在し、無意識的なプロセスがこれらの層にて進行している。心理面を制御しようとする瞑想法は、住人の心が多層的な構造を持っていることを踏まえて、意識の深層段階へと到達することを目的とした鍛錬手法である。これを超えた先に視える精榛の姿形は、動物たちと同様のもの――より正確にいえば、精榛の姿を元に多様な動物たちが創生されたというのが真相だが――が大多数を占めている。
 原初世界の理(ことわり)の顕現、十三体の天則統理(てんそくとうり)は、鼠。牛。猫。兎。魚。蛇。馬。羊。猿。鳥。犬。豚。鹿。といった精榛を通じて現世の向こう側=Bすなわち天外から想像力∞破壊力≠操作しており、これらに当てはまらないものでも、天欠(てんけつ)という存在の狸や、先述の珠辰を持つ者の始祖、既精概然たち五人の龍は有名な精榛の容姿と言える。
「人間がほかより精榛に詳しいのは、そうしないと非力だからだと言えない?」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 238