小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:SとFの誤謬 作者:鈴木翔太

最終回 14


「スぺクトラ!」
 彼女に向かって声をあげると、彼女は片手の指先で、天外への飛来物を示す。
 舟艇と形容すればいいのだろうか。接近してくる飛来物は、どちらかといえば小ぶりな機械。敵意がないことを表しているらしく、操縦席そばに取り付けられている照明が何回か点滅した。
「ワクワクするわね、ファントム。ついに待ち人が来たのよ!」
「待ち人って……まさか、あの舟艇に乗ってやって来たのが?」
 スぺクトラも思念の捕捉を受けている。天外の力におのずから繋がる℃メ。天外へ到達できる人物といったら、それがどのような性質をもった相手なのかは再度思考しなくとも理解できようというもの。
 舟艇は突如として速度をあげ、天外を突き破り、不時着する。
 スぺクトラは面白そうに舟艇の正面に張りつき、内部の様子を確認しようと、頭をあっちへふらふら、こっちへふらふらと揺さぶった。この仕草の合間に匣を元の状態に直しているあたり、興味だけに没頭しきってはいない様子だけれど。
 空気が抜けるような騒音のあと。操縦席が上方に開こうとするので、不恰好に裏手へ跳ね、スぺクトラは少しだけ表情をしかめた。
 ファントムはというと、開放された操縦席から身を乗り出した人物の装いに、既視感を覚えさせられる。目にする人物の特徴は、とある浪人に酷似していた。
 額当に逆立った頭髪。裃の上に着込んでいる胴服。背後に浮遊している数珠。左肩に装備された鏡盤。右手に逆手に掴まれた大剣。
「小鴉丸(こがらすまる)……なのか?」
 とっくの昔に他界しているはずだが、身なりも得物も紛れなく、あの益荒男が所持していた品々と寸分たがわない。
「むぅ? あいつの知り合い? というか、アウトランド、殺風景なとこねぇ。足元に転がってる本の山くらいしか見るもんなさそう」
 ファントムが発した浪人ではとらぬであろう言動ののち、源解和合は両の眼で天外を見わたした。瞳の色味はやはり紫だが、予想していたような俗欲を離れた精神性をもっているようには見受けられない。
「此処って、アウトランドでいいのよね? まさか間違ってる、なんてことないでしょ?」
 おそらく天外のことを言っているのだと解釈し、我々は彼女に対して頷く。
 すると彼女は、三種の武器に天外の力を示現させ、剣の先端から光を撃つ。
「到達の記念に、名を刻ませてもらったわ。あたしは、イドラ=ゼナリシア」












← 前の回  ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 68