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作品名:SとFの誤謬 作者:鈴木翔太

第11回 11


「……私の力≠使いながら、第二の叛虐者になりそうだった男も、劣化版の既精概然だったわね」
「あいつも風変わりな人物だったよな。出自も才覚も努力も一級品だったのに、焦りすぎていたんだよな」
彼の者≠ニ叛虐者との戦いに参加していた、既精概然たちと天則統理たちも、世界線において大きく境遇に違いがある。ほとんどの異なる一輪≠フ戦果は、総大将どちらも消滅。のちの世界を既精概然が発展させるというものばかりだ。
 だが問題となっている叛虐者が現存している異なる一輪≠ナは、己の呼称を保護存在と改めた天則統理たちが世界を安定させている。保護存在も劣化からは逃れられていないけれど、既精概然が土台を作った仙術師から、優れた使い手を選考することで任務を引き継がせ、今日まで存在を保っているのだ。
「なぁスぺクトラ。繋がり≠ェ少ないのに、異なる一輪≠ヨの行き来が増えている理由、わかるか?」
 努めて真面目な口調で、ファントムは尋ねた。
「知らないけど? ファントムは感づいてるの?」
 関心が引かれたらしく、彼女の瞳が好機に輝いた。
 ヒトであったならば、この仕草に何かを覚えただろうか。
 そんな他愛もない考えが、こちらの内側で、ふと生じる。
「いいや。見当もつかないから訊いたんだ。奇妙だよなぁ」
 声を飛ばしつつ、背を向けて歩きはじめる。
 禁孔をともなわせて移動する最中、忍ばせていた一冊の書を衣から抜き取り、視線をそちらへ落とす。
 破核書(はかくしょ)と銘が記されたこれは、根頓からスぺクトラに先んじて確定されたファントムが仰せ付けられた任務にかかわる書物だ。
 位相世界は範型の許容量に則り、内包できる住民の絶対数が規定されている。すなわち、機能している稼核の数には限りがある。稼核の修復は、死後の世界で魂の解化(かいか)を促している開眼の巫女が行っているのだけど、長い期間をかけなくては修復作業は完了しない。必然、軽度の損傷では修復は見過ごされ、破核は新たな生命のために使用されることになる。
 これら破核は、個体が外的ないし内的な衝撃を負った状態を指すものであると同時に、稼核が蓄積している秘跡……記録が霊魂と混濁した事態でもある。
現世の内側≠ナ俗に前世の記憶と言われるものは、複数回にわたり使用された稼核の秘跡が意識と結ばれ、断片的に読み取られたもの。ここから悪化すると、無意識での想像力≠働かせ、固体内で秘跡を原型とした別人格を同居させてしまったり、知識がないままに思念を操る霊能者が偶発してしまったり、我々にとって不都合な出来事が巻き起こる。
 破核書はいわば、そういう者たちを列挙したブラックリスト。
 始まりの声は、住民の規定数を超過した際、破核を優先的に処分させるために破壊力<tァントムにもう一冊の書を預けたというわけだ。


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