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作品名:SとFの誤謬 作者:鈴木翔太

第10回 10


「叛虐者を退場させるには、留存架に匿ってる抜け殻を、上手に使うしかない。ラムとの交信はそのためにも必要だ」
「抜け殻――空っぽの肉体に頼るのもおかしな話だけど。保護存在とかってのが風化しないようにしている、救世主サマの身体、魂は定着させられたの?」
 スぺクトラからの問いに、ファントムは渋い顔になった。
 理論と算段は整っているものの、下≠ナ良い成果はあがっていない。
「…………こういうときがやきもきするのよ。私なら、すぐにも力≠使って解決なのに」
「この大宇宙に生を受けたのなら、どんな人物にも乗り越えるべき試練がある。俺たちの忍耐もそのうちのひとつなんだと、そう考えるしかないんじゃないか」
 納得させようと言葉をつむぐが、スぺクトラは憮然とした表情をほぐさない。
 住民たちと諸事を共有したいという彼女の気持ちは、よくわかるのだけれど、根頓の指令を無視することは許されるものではないだろう。
 それに、自分たちは天外から力≠精榛たちへと送り込むことはできても、巨大な蕾のごとき造形をした半透明な匣のなかからは出られないのだ。
「叛虐者が生まれた世界での、既精概然と仙術師の熟練度、どのくらいだっけ」
「仙術師は高水準だったはず……既精概然や天則統理の後身は劣化してるけど」
 原初世界において勃発した戦の結果――辿られる可能性から分岐した世界線の一本から出現した叛虐者は、基本世界の一部の者から激しく敵視されている。
 これなる基本世界の既精概然は、怨敵を打ち滅ぼさんがためにいくつもの策を講じたが、そこにふくまれるものが仙術師であった。創世種からあたえられた、天外の力を操作する手段を術式として学習させ、叛虐者を消滅させる戦士を誕生させるという目的。現世の向こう側≠ニ対峙できる者も現世の向こう側≠ノ属している者だけだったのである。
 仙術師は、結晶体と呼び習わされている事物を砕き、術式にて人為的に精榛を結晶体へと投射。天外の力・精榛・己自身、三位一体の法則を理解したうえで、宇宙全体と繋がる≠スめの知識、自然智を感得していくこととなる。
 こうした修練で重要となってくるものが、思念を自在とする能力だ。
想像力≠ノせよ破壊力≠ノせよ、個から発せられる思念を受信できなくては手助けのしようがない。思念を固有の波形として発効・捕捉する技量なくして、力≠フ行使はありえないものだ。
 思念波には大小のくくりがあり、大きなものを獣の鳴き声に擬えうなり=B小さなものを鳥の鳴き声に擬えさえずり≠ニする。思念波は、いかなる形でも力≠使用するために必要とされる基礎中の基礎。人物の意識は電子の波動。入出力も変換も、より強固な魂と知がそろうことで絶大な効果が期待できる。


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