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作品名:ロスト・ネーム 作者:鈴木翔太

第82回 Memory3-4 そのA


「こ……、これ……は……ッ!?」
 頭に流し込まれた映像と音声が一体となり、脳内で再生されだした。
 あたり一面が洞窟の内部がごとき、ひらけた場所へと様変わりする。
 そして、そこに立っているのは七名の男女だ。体格も年齢も統一性のない、不可思議な恰好をした者たちだ。
 一組の男女の前に横一列に並んだ五人は、両者に対して口々に語っている。
 しかし両者は、みなの言うことが信じられぬようで、即座に異論を述べた。
『そんな馬鹿なことがあるか! 俺たち十三の〈天則統理〉は皆、同質のはず!』
『貴方たち以外は同質の存在だ。二人だけが真の原点秘跡(オリジン・コード)を持っているのだからな』
『なぜ、わたしたちが!? なぜ、わたしたちだけ!?』
『アナタ方だけがエリスの影響を受けなかった。それゆえに、原点秘跡を保有、確保することができた』
『エリスは創造主だぞ!? おまえたちの言う原点秘跡とやらも、無限に――』
『作成できないんだよ。アレにはそんな知識も技術もないんだから』
『……どうして? エリスが全知全能であるなら、可能なはずでしょう!』
『全知全能。そのことを疑ったことは、本当にないの? エリスが本当に万能であるなら、天護区や自護区という区分はなに? リフレクションを消せない理由は?』
『それは……それはリフレクションが機能を妨害しているせいで、実力が発揮できていないためだ! 事実、核球(スフィラ)に然るべき処置を済ませれば!』
『それ自体がおかしいと言ってるんだ。なぜ、エリス自身が核球に触れられず、〈天則統理〉が動かなくてはならない? リフレクションが出現した時点で、脅威の芽を摘まなかったのはどうしてだ?』
 五人の追及に、両者は放てる言葉を失った。
 クレメンツ少年には会話の中身が意味不明ではあったものの、ふたりの狼狽ぶりや動揺には恐怖心が見え隠れしていると感じられた。己自身の信じていたものが否定され、やり場のない想いを託(かこ)っているように。
 映像の乱れとともに、場面は洞窟から移り変わる。
 その次に視えたのは、神殿を思わせるような建物。内部では先ほどのみなが、デザインの似通った装備をまとった者たちと、激闘を繰り広げていた。
『俺たちは利用されている! 人間たちを救いたいなら、抗うべきなんだ!』
『貴様、気が触れたのか。あの五人こそが、特質変異≠アそが危険分子だ! 絶殺せねばならない不逞の輩どもだ!』
 建物内の各地点だろう。映像は様々な戦士と戦闘に切り替わる。
 一組の男女は身体に傷を増やしながらも、進む先を目指して行動し続ける。はじめの五人も力を合わせ、絆を深めて前進していく。
『あなたに賭けてみる。それも悪くない。少なくとも、後悔なく生きられるわ』
『後悔なんてさせないさ。俺たちは勝ち取るんだ。未来も、希望も、全部を!』
 ついに、七名と十一の戦士は結託し、とある女性の元にまでたどり着いた。
 彼女は慈愛に満ちた微笑みを浮かべたまま、装いを煌きで変化させる。
 彼女の操る絶技たるや凄まじく、みなは瞬く間に地に伏すこととなった。
 その女性はあまりにも強力だった。あまりにも強大にすぎた。
 最後まで立っていた彼までも力尽き、難敵の前に膝を折った。
『よく頑張ったわね。貴方はとてもよく頑張った。けれど、現実は非情なもの』
『だったら、どうした……! もとより、情けで勝利を拾うつもりなど……!』
『吠えるのは、もうやめにして。さぁ、貴方も皆と同じにしてあげましょう。彼に生き写しの貴方だもの――彼の似姿として、それは大切にしてあげるわ』
『ふざけるな……ッ! シン自身も、おまえが殺めたくせに、ぬけぬけとッ!』
 彼が吐血するほどの勢いで叫ぶと、彼女は微笑みをやめ、血気に突撃する。
 彼女が、彼の胸部より心臓を掴みだすのと同時に、映像はすべて停止した。
 連動するかのごとく、私の意識までも、これによって途絶える。
 一連の映像が意味する記憶が何かを知るすべもなく、床面に倒れ込んでいた。


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