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作品名:ロスト・ネーム 作者:鈴木翔太

第49回 49


「待ちな、あんたたち。こっから先は通行止めだよ」
 よく通る澄んだ声で、ディアナは視界に捉えた三人の男へと、声音を放つ。
 鋼鞭ヴァイパーを構え、見栄を切る副団長は、柔と剛の両方を備えていた。
「ディアナ・ストライフ。副団長が、自分から来てくれるとはな」
「男どもが使えないからよ。無駄な物ぶら下げてるだけのゴミだわ、あいつら」
 彼女の口にすることにデリンジャーは、「キツい娘だね、彼女」とクレメンツに耳打ちする。相棒の状況を無視した戯言に、蒼は思わず肩をおとした。
「確かに、その手の豚がこの街には多い。しかし、だから必ずしも全てそうだ、とは思ってほしくはないな」
「はん。ならっ、あんたが証明したら? アジアの野猿野郎がッ!」
「ふっ、かまわんさ。俺もこれで飯を食ってるんだ。退屈はさせん」
 矮躯の竜を象った真紅の右拳防護籠手、小竜をディアナの両眼に見せつけて、蒼は左手でデリンジャーとクレメンツに先を急がせる。
 しっかりと頷いたふたりは、迷わず通路を走り抜けた。
 ディアナはそれを、まったく意に介することなく、涼やかな態度で見送った。もはや衛兵の数も心許なくなっているはずだが、その眼は怪しく煌めいている。
「通行止めではなかったか? それとも、ほかの幹部たちなら、仕損じることはないと?」
「そんなもん聞いて、なんになるってのよ。あんたは他人よりも、自分の心配をしてたら? でないと、見っともない死に様を晒すことになるか――ら!」
 ディアナは鋼鞭ヴァイパーを操り、蒼をめがけて揮う。
 空気を削ぎ落すかのごとき一打を寸前でかわして、蒼は間合いを詰めようと、踏み込みの姿勢に入った。
 至近距離に入れば、相手の露わにされた腹部に籠手を放てる。肋骨の何本かは衝撃で犠牲になるかもしれないが、彼女も組織に名を刻みし幹部だ。命を張らず戦場に立っているわけはない。
「……ッ!?」
 突き出した右拳が、予想と違う感触に阻まれる。
 見ればそれは、彼女の得物であるヴァイパーだ。
 ディアナは放ったヴァイパーを、その重量などは知ったことかと引き戻して、自身の腹部の前で円を描くように防御盤と化していたのである。
「生ぬるい……、本気でやんなってぇのッ!」


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