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作品名:ロスト・ネーム 作者:鈴木翔太

第43回 43


 ウクルは団長命令にしたがい、ダンスホールで宴の準備を急がせていた。
 ウクルはよく意味が解らなかったのだが、『今日は客人が押し寄せる』らしい。その催しは徹底されたモテナシが不可欠であるらしく、とにかくゴージャスに、食べ物。飲み物。ドレスコード。音響機器までもを、完璧な状態で用意する。
「ウクル様。舞台演奏を頼まれたという者たちが、ホールに来ておりますが?」
「うん? 誰かが手配したんだろ。呼べ、イカルスとディアナも喜ぶ。早く」
「かしこまりました」
 部下がさがると、少しして、外套を被った演奏楽団がホールに詰め寄せる。
 演奏楽団はそれぞれ楽器をケースに忍ばせ、一礼したあと、そそくさと舞台に上がった。
「にぎやかだ。これならみんな、大満足」
 ウクルはにこにこしながら、次の準備のためホールを出る。部下の衛兵たちはそのあいだも慌ただしく働き、会場作りに全力で取り組むのだった。
「おっ、これはなんとも美味そうな。……ならんならん、気をしっかりせねば」
 一方、それとは別に呟いたのは、こちらも指示を受けてホテルに先行していたパイソンである。
 クレメンツの頼みを聞き入れ、情報を集めてウェッソンの店に同行したのち、ストライフ自衛団の衛兵人数や武装をすべて調べ上げていたのだ。
 治療したばかりの肉体はまだ動きが悪いが、ニレオ直々の申し入れであるし、今まで相棒として行動してきたニコムスの仇討ちだ。休んでいる暇などない。
「小生が肉体を損傷していなければ…………。悼むぞ、ニコムス」
 パイソンは自らの胸板に右手を当てて黙祷を捧げると、床から片手を離して、ホテル全室の監視をいったん切り上げる。
 クレメンツを守るため、相手のそばに近づいていなくてはならないためだ。
 集約者の名のとおり、空気の層を己自身のまわりに集めて姿を見えなくさせ、パーティ会場に移動する。
「回収者と抹消者はツレない奴らよな。『人間のことは人間に任せろ』などと」


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