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作品名:ロスト・ネーム 作者:鈴木翔太

第42回 O.O.S.『さぷらいず・ぱーちー!』 その@


   O.O.S.『さぷらいず・ぱーちー!』

 ――ストライフ自衛団アジト、クイックサンドホテル屋上。
 冷風吹きすさぶその場に、ディアナは立っていた。
 イカルスから軽くあつかわれることは慣れているが、今回のウクルの失態は、断じて見て見ぬフリのできるものではない。組織の幹部だからこそ、きっちり下の者に示しをつけねばならなかったのだ。
「なんでわたしが、あの程度の優男に、ヘーコラしなくちゃいけないのよ」
 奇策を講じて組織を掌握できないかと、上昇志向の激しいディアナは歯噛みする。新時代の幕開けとともに、ストライフ自衛団も新体制を築くべきなのだ。
 たとえば――そう、自らのような行動力のある統治者のもとで。
「でも、いいわ。使える者も使えるあいだは泳がせておく。どちらにしても、敵は多いわけだし…………あん?」
 テンガロンハットのツバをいじってから、ディアナは背後から近づいてくる気配に振り返る。屋上に現れた人物は、副団長にとっての目の上のタンコブ、現団長のイカルスだった。
「そんなに肌を出してっと、風邪ひくぜ。女は身体を冷やすとマズいんだろ?」
「どっから拾ってくるのよ、そういう話」
「ちょっとおめーに言いづらい店のお姉ちゃんたちが喋ってたんだ。遊び回るのも、知識を増やすには悪くねぇ」
「そのために支払うもののほうが大きいっての。……要件は? わたしにまだ文句があるなら、聞いてやるけど」
 ディアナがつっけどんに言い返せば、イカルスはがりがりと頭をかいた。
 相手は着替えてきたようで、シンプルな白のタキシードを着用している。
「おめーな。ちょいとばかし露骨なんだよ。反骨精神もつのはかまわねぇけど、声に出すのはやめといたほうがいいぞ」
「言いたいことがそれだけなら、部屋に帰ったら? 風に当たってたいのよ」
 再び背を向けるディアナ。イカルスはその肩をそっと掴む。
「聞けって。おめー、魔銃のスミス≠知ってるだろ」
「わたしが知る限り、最もムカつく女よ。あのオバハンがなんなの」
「……あの女、ウクルの医者殺しに噛んでるかもしれねぇ」
「――ッ!」
 イカルスの発言に、入れ替わるようにディアナが襟元に掴みかかった。
 鋼鞭ヴァイパーを利き手である左手に構えて、床の一部に叩きつける。
「何よそれッ、詳しく言いなさいよッ!?」
「こらこら、クールに……まぁいいや、あくまで俺の推測なんだがな」
 イカルスは、自らの考えを丁寧に説いた。
魔銃のスミス≠ヘあらゆる技術と学問に精通している。彼女の実験の被験体となり、ウクルの肉体に変化が起こっているのかもしれない、と。
 ウクルが語った『怪生物』の正体を、イカルスにはほかに説明できなかった。弟の口にしていた仮面の男というのが、スミスの息のかかった使い手であれば、じゅうぶんな裏付けとなることだろう。
「俺らの言えたことじゃねぇが、人道に背く行為だ。無視できねぇぞ」
「わたしの手駒に、あのアマ……! ただじゃおかないわ」
 ディアナは鋼鞭ヴァイパーを操り、屋上に取り付けられた手すりを破壊した。
「――いいじゃない、すごくわかりやすい。これでお相子ってことだ」
「そうだな…………俺たちもオモテナシの準備にかかるぞ、ディアナ」
「上から物言うな。わたしはわたしで殺るだけよ」
 鋼鞭ヴァイパーをしならせ、下階に靴音を鳴らしながら歩いて行くディアナ。
 イカルスは双剣リトル・ウィングを抜き、ジャグリングしながら背中を追う。
「はねっ返りのお転婆娘……。あんまり意気込みすぎるなよ、可愛い妹ちゃん」


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