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作品名:Freshness(フレッシュネス) 作者:鈴木翔太

第53回 53


 ニルゴア森林・最深部にある恵褒樹の前では、鳥と獣たちによるリタの戴冠式が執り行われていた。戴冠式とはいっても、冠は草木で編まれたもので、生命の根幹――鮮度≠ニいう概念の具現存在、リタを祝うためのものだ。
 グルナードに先を歩かせ、連なる臣下に一礼されるリタは、今日は白獅子の姿を虚構して、ミシルが咥える冠をかぶせられた。
 冠をかぶって満足そうなリタは、幼子となってその場でくるりと一回転する。
 グルナードとミシルは、そうした主君の愛らしい様子に眼を涙ぐませた。
《ミシル、涙腺が緩いぞ。こんなことで泣くな》
《泣いているのはオマエもだぞ。ふふっ、可愛い奴め》
《なんだと、キサマのほうがより早く……!》
 雄狼が吠え猛ると、リタと動物たちの視線が、落ち着き払う雌狼に集まる。
 ミシルは小さく笑い、妙齢ならではの慎ましい会釈で、危険はないと伝えた。
《その様子では、オマエにつがいが現れるのは、当分先やもしれんな》
《黙れ……キサマのほうとて、雄と契り交わした経験なぞなかろうに》
 グルナードが反撃に出れば、ミシルはすぐに話題を変えた。
《話は変わるが友よ。あの少年だが、本当にああして良かったのだろうか?》
《良かろうと悪かろうと、すでにあの男は従牙だ。関係が塗り替わるなら、劇的なほうが華々しかろう》
《人間でありながら、我ら同種の力をもつ存在……。どう動くか、楽しみだな》
 二匹がしたり顔をしている合間に、動物たちはそれぞれの縄張りに移りだす。
 しかも、離れていく群れのなかには、ちゃっかりとリタの姿もまぎれていた。


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