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作品名:Freshness(フレッシュネス) 作者:鈴木翔太

第52回 52


   5 鮮度≠フ彼方

 リタをとりまく騒動が解決すると、リジェナはファルシオンを隊長権限にて拘束。職務を逸脱した行動の責を問うため、審問にかけることを固く誓った。
 リジェナは、ロレーヌと二言三言まじえると、ダグラスと連絡先を交換して、今回の件の後始末をつけるため、一時的に機構本部に帰還。
 フレイルがリタにかなり好感を持たれているので、少年に政府機構特別交渉人という位を授与させ、ふたたび暴走することのないよう見守る役を担わせた。
 彼女はこの騒動で結晶体をただのエネルギー物資として扱うことに抵抗が生まれ、フレイルとのあいだの交渉により、本人の意思で協力を願えないかと考えている。人類の生活が懸かっているからといって、リタの生命を利己的に搾取するのは避けねばならない。
 政府機構特別交渉人とは、人類と結晶体との新しい関係性を狙った役職だ。
 ……だが、この役職は今のところリジェナの独断である。本部に申請が受理されるかはわからないし、受理されたとしても、表立って存在を認められたりはしないだろう。そのうえ、結晶体と交渉が上手くいかなければ、ひとりですべての責めを負わされる可能性も高い。極めてリスキーな役職だ。
 ――だけれどフレイルは、この役目をふたつ返事で了承した。
 もっとも、政府機構特別交渉人となってからも、フレイル自身の行動や持論には目立った変化は何もなかったのだが。
 フレイルはこれまでどおり、便利屋Freshnessを営み、地方都市アルシエロの再建に尽力し、飛翔艇獲得の資金を集めるだけのこと。
 ダグラスからの鉄拳や、お詫びを兼ねた感謝祭での出費は痛かったけれど、そんなことをいつまでも気にする性格でもない。
 少年は存分に心躍った冒険の記憶を胸に、鮮度≠求めてひたすらに歩む。
「うっし! 完成だ! 出来上がったぞ!」
 組み立てられた飛翔艇を満足げに眺め、ひとりガレージで両腕を振り上げる。
 これで夢焦がれた青空を、心ゆくまで舞うことができる。試運転を始めよう。
「早速、ロレーヌに連絡しよう。あいつも喜ぶぞーっ」
 携帯端末を掴んで、幼馴染の番号を入力する。ロレーヌには飛翔艇に乗せるという望みをかなえると言ってあるだけでなく、幼き日の誓いも絡んで、必ず同乗してもらいたいのだ。
「あっ、ロレーヌ。飛翔艇ができたんだ、もうホヤホヤ!」
「飛翔艇が? おめでとう、長年の夢が実を結んだね」
「ああ、やっとだよ。それでお前、すぐに来られるか」
「うん。フレイルとの予定だもの、何があっても優先するわ」
 静かだが、彼女の声も嬉しそうに聞こえる。
 あれ以来、ロレーヌの心にはこれまでにない余裕があった。
「じゃあ、事務所のガレージにいるからさ。着いたら、また電話くれよ」
「わかった。……楽しみだね」
 ロレーヌの言うことに、フレイルは電話口だが大きく頷いた。


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