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作品名:Freshness(フレッシュネス) 作者:鈴木翔太

第44回 44


 二発目の弾道の先にいるのは、腕のなかでリタを守るロレーヌだ。
 光球状の砲弾は、彼女らを撃ち砕かんと、旋回するほどに速度を上げる。
「ロレーヌ、走れ! 逃げるんだ!」
《グルァアアアアアアアッ!!》
 フレイルが声を飛ばしたが、この叫びは野性味あふれる鳴き声に呑まれた。鳴き声の主は、事務所に乗り込んできたグルナードである。地に亀裂を入れる力強い走りで、自走機関を上回る素早さで、グルナードはリタめがけて駆ける。
 あいつが来るなんて! ダグラスはやられたのか!?
 混迷の加速する六番街表通りにあって、フレイルの頭脳は、次々と急変する事態に破裂しそうであった。
 リタのことを狙っているらしい従牙の猛威に、その獣を鎮めようとしているはずの〈エクスキャリバー〉の暴走。そして傷ついていく仕事仲間たち。
 それらすべてが、ニルゴア森林からリタを連れ帰ったことに端を発していることに、フレイルは気づいていた。鮮度≠尊重すると公言しておきながら、このような災いを生まれ故郷に運んでしまうとは、とんでもない失態だ。
 どうすればいい!? こんなときには、どうすればいいんだよ!?
 脳内麻薬で緩やかに感じる時のなか、フレイルは己に問いかける。
 砲弾はロレーヌとリタを襲う。駆けてくる従牙にも当たるかもしれない。
 だとしたら、俺にできるのは……!
 決意を固めたフレイルに、迷いはなかった。
 左肘を突き出すような構えをとると、ロレーヌに向かって体当たりをする。
 ロレーヌの身体はリタを抱えたまま突き飛ばされ、したたかに身を打った。
 主君への狼藉に激高するグルナードはこちらに向かって飛びかかってきたが、これを予想していたフレイルは、今度は右肘で獣を吹き飛ばそうとする。
 反動でフレイル自身も後方に吹き飛んだが、三つの命は砲弾の危機を脱した。
 宙を舞う自分の数センチ横では、レーザーボールが市街ゲートに着弾する。区画を防護する壁版が、上方からは雨あられと降り注いだ。
 自分はその豪雨に沈む寸前、両目に幼馴染と幼子の姿を捉えていた。
 どちらも悲痛な面持ちではあったけれど、たいした怪我はしていない。
 ふたりの鮮度≠ヘ、保たれている。
 そう確信した途端、壁版は自分の身を覆い隠した。
 やむことのない激痛に、意識が遠のいていく……。


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