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作品名:Freshness(フレッシュネス) 作者:鈴木翔太

第42回 42


《あの少年、無茶なことを進言するものだ……》
 最小限の動きでファルシオンの剣技を避けるミシルは、眼下のフレイルへと呆れたように呟く。
 そのような言葉を信頼して、誰が機体から身を投げるものか。
 確実に受け止められる保証などないのだろうし、落下にともなう重力加速は、総身にただならぬ負荷をかける。フレイルとて無傷では済まない。どのように転じようと、分の悪い賭けと言えるだろう。
 ただ、そうまで口にして仲間を助けようとしているフレイルの姿を、ミシルは好感をもって横目で見やる。断じて交わりえない種の壁が設けられているが、支持できる想いを持ち合わせる者には、ミシルの心は自然と動かされるのだ。
「アクス、飛べーーッ!」
 フレイルに目をくれたとき、相手の様子は、顔の近くで両手をかかげているように見えた。彼としては、しがみついている友を手招いているつもりでいるのだろう。
《!? こ、この光景は……!》
 けれどミシルには、なぜかフレイルの行動に別の景色が視えていた。
 それは小鳥をかかげる童子の姿だ。従牙としての全盛期にあった頃の、おぼろげなる記憶。ニルゴア森林に政府機構ではない子供らが足を踏み入れた、珍奇な事件のことだった。
《あれは何年前だった? あの童子は、事もあろうに我が君を森へ……――!》
 ミシルの頭のなかで、とある点と点が結びつく。
 ミシルの推察が真実であるとすれば、結晶体が彼に懐いていることも、じゅうぶん理解することができる。
《彼がそうだとすれば、そばにいるのは空ばかり眺めていた童女か!》
 なぜ今日に限って、記憶のなかの人物に二度も出会うのかと訝しみつつも、図ったような場の整い具合に、肌が粟だつのを覚えた。感慨にざわめく胸に、細身の獣は身を震わせる。


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