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作品名:Freshness(フレッシュネス) 作者:鈴木翔太

第37回 37


「はぁっ、はぁっ、はぁ……!」
 三者が思考を巡らせて手を休めているとき、重い荷物を背負って、ひとりで便利屋Freshnessを目指して走っている者がいた。
 六番街までずっと休みなしで猛ダッシュした身体は息が切れ、衣服も流れた汗に染みができてしまっている。
 しかも、荷物をまとめている上着からは機械部品がこぼれ落ちることもあり、注意していないと余計な疲労が溜まる一方だ。
「これは……、ちょっとやそっとの埋め合わせでは足りませんね。フレイル、特別ボーナスくらいは覚悟してもらいましょうか」
 アクス・ハルベルトは、背負った荷を地べたに下ろすと、ひと息ついて街の様子を眺めた。夕方とはいえ、今日はずいぶんと人通りが少ない。これくらいの時間帯なら、普段はもっとたくさんの人々が交差点を埋めるように行き交っているものだが。
「どこか妙な雰囲気……。事件でもあったのでしょうか」
 誰かが傷つく類のものでなければいいのだが、とアクスは表情を曇らせて、もう少しで到着する事務所への歩みを急がせることに決めた。
 帰宅していることに期待しているが、ひょっとしたらフレイルも街に戻っていないかもしれないし、時間を無駄にすることは避けねばならない。
「……!? あれはッ」
 ふたたび荷物を背負って駆け出した自分の視界に、街で見かけたことのない物体が入り込んできた。
 市街上方部に用意された映写展開装置が作り出している青空を突き抜けて、ひとり乗りと思わしき五角形の機体が、街を見下ろすように出現したのだ。
 この機体は機動探査艇エアキャリアと呼ばれており、政府機構の飛翔艇内に常備されている支援機器である。
 アクスは目聡くエアキャリアに描かれた機構の刻印を確認して、本当にただならないことが起きているのだということを確信する。
「僕をのけ者に、何が始まっているのやら。のんびりするのもここまでです」
 アクスは片手で額の汗を拭い、息をはずませ、開かれた大通りを駆けぬける。
 ――上空から遠目にそれを見ていた、憎たらしいエアキャリアの乗組員は、振動刃サーベルを片手に握り、いびつに口元を歪ませていた。
「さぁ、俺の地位を上げてくれる獲物は――どこにいる?」
 乗組員がもてあそぶ刃の切っ先は、便利屋Freshnessをピタリと指した。


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