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作品名:Freshness(フレッシュネス) 作者:鈴木翔太

第29回 29


 知恵熱にうかされるフレイルと、すやすやと寝息を立てる幼子は、ナタルがゆっくり転がした自走機関の運転に揺られ、便利屋Freshnessにたどり着いた。
 考えすぎで痛む頭を押さえ、真っ先に機体から降りようとするフレイル。
 ナタルはそんな後ろ姿に声をかけるなり、ハンドバッグを投げ寄こした。
「ほらフレイル、お土産忘れずにぃっ」
「えっ……ちょっと待て、ナタルッ!」
 これにフレイルが大きく反応を示した理由は、前触れもなくバッグを放られたからだけではなく、バッグのなかに眠った幼子が収められていたからである。
 ついさっき注意を受けたばかりだというのに、ナタルの幼子へのあつかいはまったく改善されていない。いや、むしろますます過激になっている。
「お前な、さっきからこの子に恨みでもあるのかよ。なんか虐待っぽいぞ!」
「あらら。あんたこそ、カノジョができたこともないのに父親みたいな台詞ね」
「恋愛経験なんか関係あるかっ! 小さい子に意地悪すんなっ!」
 こちらの至極真っ当な言い分に、ナタルはダグラスの容姿を想起したようだ。
 まったく、他人に余計な影響を与えてくれるものだ。と、彼女は副所長の姿を目蓋の裏に描いて、両手を腰に持っていく。
「ダグラスみたいなこと言うと、あんたもそのうちツルッパゲるわよ〜〜?」
「あいつは抜け禿げたんじゃなくて、自分で剃ったんだよ」
 というかさ、と言葉を続ける。
「俺やあいつじゃなくたって、今のお前には何かしら意見するぜ、普通」
「普通ってなんだっつーの。まずはその定義から教えてほしいもんだわ」
 ナタルは片腕を伸ばして、そのまま横方向に状態をまげる。
 ナタルが日課として行っている自分磨きのひとつ、スタイルを整えるための矯正ストレッチである。
「だいたい、ありがちな行動ならやる意味ないじゃない。日常には少しばかりの遊び心とロマンスを散りばめるべきよ」
「ナタルのは『少しばかり』じゃないと思う。どちらかといえば、あらん限りのってほうが、ふさわしい感じだ」
「何事も足らないよりは多いほうがマシじゃな〜〜い。胸キュンでドキワクな人生とか、さ〜〜いこうっ♪」
 キャピキャピとした声音を作ったナタルは、これも秘蔵の映像データ集から修めたのだろう、どことなく古くささを感じさせるポーズで谷間を強調する。
 やや顔を赤らめたフレイルは視線を逸らすと、ハンドバッグを寝袋がわりにしている幼子を左腕に抱いて、事務所の玄関に向き直った。
 それと時を同じくして、切迫した表情の幼馴染が、飛び込んで来たかのように玄関の扉を開け放つ。おそらく、話し声が事務所内まで聞こえたのだろう。


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