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作品名:Freshness(フレッシュネス) 作者:鈴木翔太

第23回 23


 幼子を連れたフレイルは、自力でニルゴア森林から離脱することに成功した。
 がむしゃらに自走機関を走らせたフレイルは、ガラクタ山とは異なる場所に出たことも気にせず、何事もなく幼子を危機から遠ざけられたことに安堵する。
「…………信じられない。奴らをまいて森を抜けることができた」
 ホッとした呟きをもらしながら後方を確認してみても、ふたりを追ってくる獣どもの姿は完全に消失している。うまく逃げ果せたのは間違いないようだ。
「焦ったもんで嫌な汗をかいたぜ。服が張りついて気持ちが悪い!」
 フレイルが上着の襟元を伸ばしてパタパタと扇ぐと、幼子はこちらに倣って微風を起こそうと片手を動かす仕草をした。
 それに気づいたフレイルは幼子の頭をひと撫でして、自走機関を降りると、大きなあくびをしてみせる。
「自走機関が凹んだだけで、動作性に問題がなかったのは幸運だな」
 フレイルは自走機関を軽くコツンと殴り、幼子に向かって話しかける。
 相手は不思議そうに小首をかしげたが、ややあって頷き返してくれた。
「俺ってピンチに強いのかも。扱い方も始めと違って、いい感じだったからな」
 ――自画自賛するように、逃走劇を制したフレイルの機体運転は無駄がなく洗練されていていた。まるでベテランドライバーのようななめらかな起動操作と、鮮やかな走行技術。見知らぬ何者かにどこからか手助けされていなくては説明がつかないほどの、とても今日はじめて自走機関に乗ったとは思えない、実に華麗な手並みであった。
「だけど調子に乗りすぎると危ないってのは、これまでの経験で学んでるんだ。ここから、この自走機関は押していこう。またドジらないとも限らないしな」
 フレイルは自走機関を両腕で力まかせに押し進ませ、まわりの景色を目にし、現在、自分がいる地点に見当をつけていく。
「あの左端にあるのがガラクタ山だな? ということは、そこから一、ニ……。三番街くらいだな、俺がゲートを越えた場所は」
 現在地点から前方百メートルあまり離れたゲートに視点を移し、フレイルは幼子に向かって声をかける。
「おチビ、お前は機体に乗ってるんだぞ? お前ごとコイツを運んでいくから」
「………………」
「……お前さ、顔を見ないと了解したのかがわかんないな。ちょい不便だわ」
「………………!!」
 フレイルの言葉に、幼子は無言のままアタフタとした。
 顔を向けはしなかったが、気配でそれを感じとったフレイルは頬を緩ませる。
「ごめん、ごめん。冗談だよ。暴れてると落っこちるぞ、おチビ」
 ひたすら無垢な子供というのは、なかなかに可愛いものだ。
 そんなことをほんの束の間考え、フレイルは散歩でもするように街に向かう。
 さて、この子についてみんなにどう言ったものか。
 あらぬ誤解を受けなければいいのだが…………。


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