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作品名:Freshness(フレッシュネス) 作者:鈴木翔太

第14回 14


 内側に宿る熱き魂を惜し気もなく発するリジェナを見つめ、ファルシオンは自身でも気づかぬうちに感嘆を吐いていた。
 リジェナは女だてらに政府特別編成隊〈エクスキャリバー〉の隊長という地位に選別されるだけのことはあり、その実力は高く、理念は尊く、機構本部でも随一の気構えの持ち主である。
 そうした、いまや政府機構そのものの象徴といっても過言ではない、兵の鑑とも言うべき人物が、珍しくも個人的な感情に揺さぶられ、肌の色が白くなるまで力強く掌を握りしめている。
「ああ――愛でたい……」
 ファルシオンは離れた場所から上司の身体の線を右手でなぞるようにして、まるで軟体動物を真似るように五本の指を気味悪く動かした。
「めでたい……って、リジェナ隊長の申請が本部会議で受理されたことかい? いまさらになって何を言ってるんだよ、ファルシオン」
 私欲にまみれた呟きを偶然にも耳にしていた隊士の言葉に、ファルシオンはハッと幻想から引きずり出される。
 ファルシオンは至福のひとときを妨害されたことにいささか腹が立ったが、相手の言葉が自分の真意とはかけ離れているらしかったので、訂正するために相手のほうに顔を向けて口をはたらかせた。
「違うぞ、エッジ。俺はあの気高い方に好意を寄せているんだ。リジェナ隊長のああした余人らしい姿――怒りに震える形相や、屈辱に泣き腫らした顔(かんばせ)、憎悪に歪む面差しを見つけると、無性に愛でたくなってくる」
 言葉を列挙するファルシオンに隊士はなんとも言えない面持ちになったが、それでもリジェナへの想いはおそらくは愛なのだろうと、どうにか折り合いをつけて納得した様子だ。
「そんなことを隊長本人に言ったら、きっと大目玉だろうけどね。それにお前、聞いたことないのか? あの噂?」
「噂……だと? どんなものだ?」
「あんまり男のする話とは思わないけど――リジェナ隊長には、ずっと気持ち揺るがずに慕っている想い人がいるそうだよ」
「ほぅ。あの鉄から削り出したような隊長になぁ」
 隊士の言葉に、ファルシオンはあえて失礼きわまりない言動で応えた。
 ファルシオンからすれば、リジェナ・プロヴァンスという女性は、色恋沙汰に興味などないタイプに思えていたため、少し意外だったのがその原因である。
「それで? 噂ではその想い人とやらは、どこの誰ということになっている?」
「ああ、それは俺たちの大先輩にあたる方で、名前のとおりのスパルタ教育で有名だった――」


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