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作品名:Freshness(フレッシュネス) 作者:鈴木翔太

第12回 12


「さてとっ。それじゃ急いで、お宝を探し出すとしますか」
 機体から飛び降りたフレイルは身体をよじり、首を左右に大きく振ってから、意気込みの言葉を放った。
 本来の機械製品としては扱えなくとも、部品や機材としての観点から見れば、ガラクタ山は一気にランクアップし、宝の山と呼ばれても見劣りのしない聖地となる。フレイルは嬉々として、特に値段の張るエンジンを見つけ出そうと、大型機材の積み上げられている方向に駆け足で進んだ。
 よれたシャツとジーンズが汚れることをちっとも気にしないで、力まかせに山の中腹を崩すその姿は、我ながら砂遊びに夢中になる子供そのものである。
「ん……?」
 せっせとエンジンを獲得しようと急ぐフレイルは、不意にこの場を去ろうとする自走機関の発進音がしないことに手を止めて、後方を振り返った。
 なぜかアクスが機体に騎乗したまま、生温かい目で、自分を眺めている。
「アクス、もう行っていいんだぜ。ドライブするんだろ、お前」
「ええ、もちろん。ただ、こうしてフレイルを見ているのも面白いもので」
「はぁ? どこが面白いってんだよ?」
「見る人が見れば、というヤツですよ。ふふふっ」
 楽しげに微笑んだアクスはしばらくのあいだ、言葉どおりこちらの発掘作業を眺め、ときに歓声を放ったり、注意を呼びかけたりして、時間を過ごした。
 フレイルは相手の視線と言葉を受けながら、多くの掘り出し物を探り当て、上着にしていたシャツを風呂敷代わりに活用し、機材を背中に担ぎ上げる。
 そうして気がつけば、あたりは黄昏に包まれはじめ、街外れにもかかわらず美味しそうな夕げの香りが、こんなところにまで漂ってくる。
「いい匂いだなぁ。お腹がグゥグゥ言ってるよ」
 条件反射で喚きだした腹の虫にフレイルは苦笑し、腹部を片手で押さえ込むようにして見せる。
「そろそろ引き上げますか、フレイル」
「おう、そうする。またロレーヌに世話を焼かれないためにもっ!」
 結局ドライブになど向かわなかったアクスの言葉に頷いて、自分は自走機関のほうに両足を動かした。入手した機材は、わずか半日で得たことを考えればじゅうぶんすぎるものであるし、六番街にある自宅までの道のりを計算しても、このあたりで切り上げることが妥当に思われたのだ。
 それから最後に感謝を込め、「また来るからな」とガラクタ山を振り返った、その瞬間の出来事であった。
 ガラクタ山より幾分、後方に位置するニルゴア森林から、木々の合間を縫うように一条の光が放たれるのを、自分の両の眼が偶然にもしっかり捉えたのは。
 だが、まばゆい輝きはあたかもフレイルにのみ信号を送りつけるかのように、それっきりなりをひそめてしまう。
「あ、アクス! お前、今の見たか!?」
「今の……? なんのことです?」
 何を騒いでいるのだと、アクスは自前の整えられた素顔をわずかにしかめた。
 こちらとあまり違わない位置にいたのだけれど、アクスはまったく今しがたの出来事に気づけていなかったようだ。
「ニルゴア森林だよ、あの森のあたりが光っただろ!?」
「光? そんなものは見えませんでしたが?」
 確認のためにもういちど尋ねるも、アクスには肩をすくめてかぶりを振るう仕草以外は何もできなかった。
「確かに見たんだよ! ――もう、どけって! この自走機関、少し借りるぞ!」
 自らの発言が信じてもらえないことに癇癪を起こし、フレイルは無理矢理にアクスから自走機関を奪い取ると、扱い方もわからぬまま起動スイッチを探し始めた。
「な、何をするんです!? これはオモチャではないんですよッ!」
「んなことわかってるって! まかせろよ、使い方は前に――うぉおおッ!?」
 心配をよそに機体をいじりまわしたフレイルは、いきなり全速力で自走機関を発進させてしまい、そのままの勢いでニルゴア森林へ瞬く間に姿を消した。
 …………のちに聞いた話によると、この場に取り残されたアクスは想定外の事態に一時呆然となったのだそうだ。
 けれど、育ちのいいアクスは持ち前の性格で気を取り直すなり、いつも身に着けている携帯端末を手にして、とある人物に着信をかけた。
「もしもし、大変なんです。フレイルが一人でニルゴア森林に突入しました!」
「あのねぇ、アクス。あたし今デート中なんだけど、その話、明日じゃダメ?」
 五番目の彼氏とともに出かけている最中のナタルは、まるで全容のはっきりとしない通話に、げんなりと言葉を返したとのことだ。


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