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作品名:真昼の嵐 作者:水星

第7回 7
どうすればみぞれにダメージを与えられるのか。茉優は授業中もそのことばかり考えていた。

出来れば、茉優のグループからみぞれをはずしたい。

新しい友達が出来て、自主的に出て行ってくれれば、万々歳だが、みぞれの性格を受け入れてくれる心の広い女子がそうそういるとも思えない。

なら、弾き出すしかない。どうやって?タカノは間違いなく、茉優の味方になってくれるだろう。

問題は葵だ。平和主義で優しい葵のことだ。下手をするとみぞれの味方になって、一緒にグループを出て行ってしまうかもしれない。

それはそれで、みぞれを喜ばすだけだ。なんといっても葵が一番のお気に入りなのだから。

第一、茉優も葵のことが大好きなのだ。五年生の時から作り上げた三人の空気を壊したくない。

あくまで異物を排除したいだけだ。葵の同情を煽らず、みぞれの悪印象を植え付ける方法。

とりあえず、私の口から葵にみぞれの悪口を言うのは禁物。むしろ、関係のない第三者の口から、みぞれの話を聞く方が良い。

誰にする?噂好きで、お節介なお人よし。口が軽くて、葵にすぐみぞれの話をしそうな人。それでいて、直接はみぞれと関わりがないほうがいい。

でも、みぞれに対して軽い反感を抱いている人物。男子生徒に対して、馴れ馴れしいみぞれを、快く思っていない女子は結構いる。特に少し派手めの子。

しかもそういった派手め女子とも、茉優は付き合いがある。あれこれと考えを巡らせていたが、ふと同じ部活の明日香の顔が思い浮かんだ。

決めた。あの子にしよう。

三時間目の休み時間、流星が英語の教科書を返しに来た。

「ありがとう。助かった」

「先生にバレなかった?」

「うん。あのさ」

「何?」

「いや……なんでもない。二十三日のコンサート、軽音も出ることになったから」

「おおっ!マジで。頑張ろう!」

手を振って教室の中に入っていく茉優の後ろ姿を流星は複雑な気持ちで見送っていた。

英語の教科書の最終ページに茉優の作った詩が書いてあった。

ざらざらした渇き、切なさ、寂しさ、諦め。人前では調子よく明るい茉優の隠された一面を見たような気がした。

それでいて、流星はたまらなくその詩に惹かれた。

流星と茉優は同じものを探していた。学童にいたあの日から。茉優の頭に載せた下手くそなティアラを流星は思い出した。

もしあのティアラが振り落とされなければ、流星と茉優は何かを共有し、こんな砂漠のような感情にとらわれずにすんだのだろうか。

茉優の母親が、幼い茉優を残して事故に遭わなければ良かったのだろうか。

降園の時刻はとっくに過ぎているのに迎えに来ない茉優の母。帰りの準備をすっかり整えて、下駄箱で座り込んでいる茉優。

小学生の頃、流星は茉優の気持ちを何度も想像した。そうして独りぼっちの自分に照らし合わせてみた。仕事で忙しい母。

上手に甘える弟には生まれつき喘息があって母はいつも弟ばかり気にかけていた。

話したいことがあっても、泣きたいことがあっても、いつもこらえていた流星。

笑顔の下で、乾いた砂がいつもざらついていた。


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