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作品名:真昼の嵐 作者:水星

第3回 3
 一時間目が移動教室だった茉優たちは理科の用意を持って教室の外に出た。

「タカノは今日、風邪で休みやって」葵が柔らかい声で言った。茉優は葵の声が好きだ。

「え〜?熱出たん?もうじき小学校でコンサートやるのに大丈夫なんかな?」

「なになに?コンサート?」みぞれが口を挟む。ついでに後ろから、茉優と葵の真ん中に割り込んできた。

みぞれのこういうところ、嫌いだわ……。茉優は苦虫を噛み潰したような顔でずんずん歩いていく。

葵が、とりなすように

「二十三日に、小学校で、親子コンサートするねん」

「え〜!すご〜い!みぞれも見に行けるんかな?」

この自分で自分をみぞれって呼ぶところも茉優は嫌いだ。

「見に来れるで。でも、みぞれ、その日は家族でお出かけって言ってなかった?」

「あ〜っ!そやった。ママのお誕生日やからホテルでランチバイキングしよって言ってたわ。ごめんな〜。見に行かれへんわ〜」

来んでええわ。茉優は胸の内で毒づく。茉優がみぞれに答えてるのに、葵のほうばかり向いて喋られるのも実に不快だ。

「葵ちゃんは、なんの楽器?」

「私は、クラリネット」

「あたしは、パーカッション」茉優が口を挟んだが、みぞれはお決まりのスルー。葵が気を利かせて、

「パーカスも休まれへんやんな。」と答えてくれた。

「うん。まだりっちゃんにはあの楽譜は叩かれへんと思うわ」茉優は一年生の名前を出す。

やった!部活の話になれば、みぞれは入れない!

「最悪、茉優が休んだら、軽音のドラムに来てもらうわ」葵が笑う。

「あ〜っ。流星ね。あいつ、上手いもんなあ」

「小学校の時とイメージ変わったやんね、大塚君」

「マジ、変わった。五年の時は、いっつも女子に泣かされてた」

「特に、茉優に」

「そう、あたしに」そう言って二人で噴出した。(やった!小学校ネタもみぞれは入ってこられへん)

だが、みぞれも諦めない。理科の坂口先生が歩いてくるのを見て、葵の腕を掴むと、「もう始まるで」と葵を引っ張っていった。

二人の後ろ姿を眺めている茉優の心にもやもやとした暗雲が立ち込めた。

 みぞれはママの話題も好きだ。茉優にママがいないのをタカノから聞いて、知っているはずなのに、しばしばママの話題を出す。

「この前、ママと映画に行ってきたのお。ほら水曜の十時からドラマやってた奴が映画化されたやん。めっちゃ面白かったあ」

優等生家族の葵も、ゲームヲタのタカノもあまり芸能ネタは詳しくない。

唯一、このメンバーでテレビのネタが分かるのは茉優だけだが、あえて口を閉ざしていた。

ママとお出かけ……。茉優にもママとのお出かけの思い出があった。

幼稚園の頃、過労死寸前のエリートサラリーマンのパパに代わって、ママは遊園地によく連れて行ってくれた。

子供向けエリアをまわり、観覧車に乗って家に帰るというパターンが多かったけど、茉優はとても楽しかった。

園内のバカ高いアイスを食べて、お財布をお土産に買ってもらった。茉優はいまだにそのボロボロのお財布を捨てずに持っている。

悔しい。あたしの欲しいものを全部持っているくせに、あたしから友達も奪い取ろうとするみぞれが大嫌いだ。


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