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作品名:向日葵とサマー 作者:水星

第7回 幸せ
 翌日から夏実は、里穂を幼稚園に送っていくと智己の眠っているすきに、一日中ネットで病気のことを調べまわった。
もちろん、この病気が間違いであるという一縷の望みも捨ててはいなかったが、調べれば調べるほど、
智己がレックリングハウゼン病であることは疑いのない事実であるように感じられた。
 大まかに言うと、レックリングハウゼン病(通称レック)は腫瘍の増殖を抑える遺伝子が正常に働かず
皮膚上や体内のありとあらゆるところに腫瘍が出来る病気だ。腫瘍は一般的に良性であるが、稀に悪性化することもある。
またいかに良性であっても心臓などの主要臓器の近辺、脊椎などの重要な神経のそばなどに大きなものが出来た場合は、
大丈夫とも言っておれず、場合によっては命の危機もあった。また骨の組織が通常の人より脆いため、
背骨が大きく曲がる側彎や足の骨が歪む偽関節などの症状が出ることもある。側彎は、何十時間にも及ぶ手術が必要になるし、
曲がった骨をまっすぐにするために足やお尻の骨を移植する際も、骨自体が脆いため健常の人の何倍も慎重に手術を行わねばならない。
足の骨も、曲がり方がひどいと中途でぼきっと折れてしまう。
更にレックの患者は骨がつきにくいため、折れた個所より先がぐらぐらとして、まるで偽物の関節のようになることもある。
装具などでうまく骨がついてくれれば良いものの、最悪の場合は切断となる。
そういった情報を読むたびに夏実は、漬物石を胃におしこまれたような気持になった。
 誰かこの病気で大人になった人に会いたい。
 ネット上に溢れる負の情報におしつぶされそうになりながら、夏実はネットの外にある情報に救いを求めていた。
 そんな時、ある書き込みを見つけた。
 私は、レックだけど生まれてきたことを不幸だと思ったことは一度もありません。
私の家族はいつでも、私のことを可愛いね、大好きだよって言ってくれました。だから、私はとても幸せです。
 夏実はその書き込みを何度も何度も見つめた。幸せという文字を久しぶりに見たような気がした。
幸せだと書いている大人がいる。ならば智己も幸せになるのではないか?
この人に会いたい。会うのは無理でもせめて話を聞きたい。夏実は悩みに悩んだ末、彼女にメッセージを送ってみることにした。
(初めまして。私の生まれたばかりの息子がレックです。あなたの書き込みを読んで、勇気づけられました。
レックは大変な病気だと聞いていますが、私の息子も大人になった時、あなたのように幸せだと言ってくれるでしょうか?サマー。)
 本名を書くのは躊躇われたので、夏実の夏からサマーとつけて送ることにした。
元来、人見知りで大人しい性格の夏実なので、送信のボタンを押す瞬間は緊張で手が震えた。
SNS全盛期の世の中にもかかわらず、ツイッターもフェイスブックも未経験だった。
 二日待って返事が来ず落胆していたところ、三日目に突然、返信が帰ってきた。


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