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作品名:向日葵とサマー 作者:水星

第5回 難病
「レックリングハウゼン病?」夏実はメモ用紙に書かれた字を見てつぶやいた。
 里穂と共に智己を連れて受診していた時だ。
夏実は智己の太ももに出来た薄く茶色い痣が二週間ほど消えないことが気になっていた。
医師は、じっとその痣を見つめると低い声で何かをつぶやき、机の上にあったメモ用紙に、レックリングハウゼン病、と書きつけた。
「それは何ですか?」
「同じような痣が五つ以上あった場合は、この病気が疑われます。いくつくらいありますか?」
「分からないですけど、他にもあるにはありますが、そんなに多くなかったと……」
「なら大丈夫です」
「レックリングハウゼン病って、どんな病気ですか?」
「いや、なに、体質みたいなものですよ」医師は言葉を濁すと目線をそらし、「里穂ちゃんの様子はどうですか?」と聞いた。
 家に帰ると夏実は、ベッドの上に智己を寝かせてゆっくりと服を脱がせていった。
生後二か月とは思えないずっしりとした身体をくまなく調べてみる。
一、二……よく見るとしみのような小さな痣も点々とあちこちに散らばっている。
もっとも大きな痣は太ももだが脇の下にも目立つ痣が見えた。
「七つ」数え終わった夏実の心臓はドキドキと早鐘を打っていた。
震える手で服を着せると、パソコンに向かい、レックリングハウゼン病と検索した。
 難病情報センターの字が目に飛び込んできたとき、夏実は雷に打たれたように動きを止めた。
(難病?難病って何?あのテレビの特番でたまにやっている難病?)
夏実の頭の中を今にも死にそうな我が子の手を握りしめている母親の映像が駆け抜けた。
(なんで?なんで?そういうのって特別な人に起こることじゃないの?私みたいに平凡な人間に起こるなんてあり得ない)
動揺した夏実は、これは何かの間違いだと自分の心に言い聞かせた。
何か、何か、これが間違いだという情報がどこかにあるはず。痣があるからといって、皆が皆、この病気であるとは限らない。
違うことだってあるかもしれない。お願い。違っていて。


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