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作品名:向日葵とサマー 作者:水星

第2回 里穂
「夏実、夏実」「ママ、ママ」呼びかける声で夏実は唐突に意識を呼び覚まされた。
「あれ?里穂?お母さん?どうしたの?こんなところで。」夏実はぱっちりと目を開けると、伸びをした。
(う〜ん、なんかよく寝た)妙に気分はすっきりしている。
「どうしたのじゃないわよ!病院から電話をもらってときは、本当にびっくりしたんだから。
あんたが意識を失って、どれだけ呼びかけても目を覚まさないって言うから、慌てて里穂とかけつけてきたのよ」
「ママ、大丈夫?」
 よく見るとお洒落自慢で若作りの母親が、着のみ着のまま、化粧もせずに泣きはらした目をしていた。
里穂は、幼稚園の制服のまま心配そうな顔でこちらをのぞきこんでいた。
里穂はその賢そうな瞳で、いつも実際よりやや上の年齢に間違えられていた。
「私、どのくらい気を失っていたの?」
「看護師さんの話では二時間以上よ。原因は分からないけど、注射の副作用かもしれないって。
何十万人に一人とかで出る副作用でショックを起こしたみたいね。
何度も起こそうと名前を呼んだそうだけど、ぴくりともしなかったらしいわ。」
一気にまくしたてるように言うと母は「良かったわ、生きていて」とつぶやき、安堵のため息をついた。
 夏実は実感が湧かないまま母の話を聞いていた。(先ほど倒れてから二時間以上?二分前の間違いなのではないかしら?)
それくらい時間の感覚が全くない。その時には恐怖の感覚さえなかった。
「家に帰りたいわ」夏実はつぶやくと里穂の手をぎゅっと握った。
温かくてふわふわとした小さな掌。
色白の頬をぷうっと膨らませると里穂は、「里穂をおいて死んじゃったらダメなんだからね」と笑った。


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