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作品名:向日葵とサマー 作者:水星

最終回 向日葵さんのくれたもの
(向日葵さん、長い間、メールしないでごめんなさい。向日葵さんがいなくなるかもしれないという事実が、
どうしても怖くてメッセージが送れませんでした。でも私、やっと向日葵さんの話していたことが分かった気がするのです。
人は自分のために生きるのではなくて、必要としてくれる人のために生きているってこと。
私を必要としてくれる人、その人たちに感謝しなくてはなりませんね。向日葵さん、ありがとう。
ずっと言いたかったのに言えませんでした。
息子が難病であることは辛いことだけど、もしかしたら私は息子のおかげで人生の意味を見つけることが出来たのかもしれません。
向日葵さん、やっぱりあなたは光でしたね。あなたに出会えて本当に良かったです)
 夏実は何度も文章を読み直し、訂正し、初めてメッセージを送った時のようにドキドキしながら送信のボタンを押した。
だが一分もたたないうちに、送ったメールは宛先不明で戻ってきてしまった。二度、三度と夏実は狂ったようにメールを再送した。
だが、何度送ってもメールは戻ってくる。それが意味していることは一つだけだった。
 向日葵さんは、もうこの世界にいない。
 夏実は唐突に悟ると、心の空白から涙がとめどなく溢れ出てきた。本当は、まだ話したいことがあった。
会いに行くことも出来なかった。それ以上にありがとうって言ってなかった。
どうしてあの時、病室にいる向日葵さんにメールを送れなかったのだろう。
向日葵さんは、私に一人で泣かないでねと言ってくれていたのに。臆病者の私は、向日葵さんを勇気づけることさえ出来なかった。
ごめんね、ごめんね、向日葵さん。本当にごめんなさい。
          ※
 数年後。夏実は、慌ただしく朝食の準備をしている。
「智己〜。起きなさい。学校、遅刻するよ」
「ママ〜。まだ眠いよ」
「何やっているの。お姉ちゃんは、もう起きたよ」
 目をこすりながら智己が起きてくる。ちょっととぼけたところはあるけど、綺麗な二重は生まれた時のままだ。
しっかり者の里穂は制服に着替えて、朝ごはんを食べている。何気ない日常は、こんなにも輝いている。
智己の病状が徐々に進行していると医師に聞かされるたび、夏実は空を見上げてじっと涙をこらえる。
(でも大丈夫。向日葵さん、私、もっともっと強くなるね。そして、いつかこの病気のことをもっと分かってもらえるようになる。
今は遠くてもいつかきっとね。だから、神様、どうか私に力を貸してください)
 夏実は目玉焼きをお皿に乗せながら、
「がんばれ、智己!」と笑った。               
             


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