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作品名:北の大地で自由を謳歌する 作者:ぷーでる

第5回 げた、ぞうり、クツ等は、履いたままでお願い申し上げませう
 加代と、英俊は、馬に乗って駅までやってくる―

 「加代さん、汽車に乗る時は、履物を履いたままで乗ってください」
  英俊が、切符を買ってくると、心配そうに言う。

 「英ちゃん、私、そこまで田舎者じゃないわよ」
  加代が、呆れつつも笑う。

 「そうだよな、加代さんは女学校を卒業しているんだから」
  英俊も、思い出して笑う。

  この時代、義務教育ではなかったので、学校へ行ってない人も多かったのだ。
  特に、女子は学校へ行っていたとしても初等科までの人が大半だった。

  二人は、そんな風にして、駅のホームにやってくると
  柱に注意書きの張り紙がー

  『汽車に、ご乗車されるお客様にご注意
   げた、ぞうり、クツ等は履いたままでお願い申し上げませう』

 「俺が言わなくても、書いてあったな」
  英俊が、注意書きの張り紙を見て、可笑しくてたまらんと噴出した。

 「やだ、未だにそんなアホな事するお客さんがいるの?」
  加代が、呆れつつ笑う。

  二人で、笑いながら汽車に乗車したー
  席に座るとー

 「客達が汽車に乗った後、
  ホームに残された数々の履物なんて新聞にも載っていたからな〜」

 英俊が、思い出して笑う。

 「それ、記事になったわけぇ〜?」
  加代も、それを聞いて、きゃははと笑う。

 「そこの二人、声がデカイ。静かにせんか!」
  通路の隣の席に座る、帽子を被ったおじさんが叱りつけた。
 
 「すみません」
  二人は、しゅんとなって頭を下げた。

 「全く、近頃の若いもんは、常識がなっとらん」
  おじさんは、上髭を指で撫でてフンッと威張った。

 二人を乗せた汽車は、どんどん先へ進む。
 やがて、橋が見えてきた。長良川を横断する。

 「いよいよ、岐阜ともお別れか」
 「そうね」
 
 「後悔していないか?」
 「もちろんよ、あんな堅苦しい所にいられない」

 「そうか、それは良かった……」
 「ええ」

 「でも、鵜が獲る鮎は好きだった」
  人が鮎を獲るより、鵜が獲った方が、息締め効果で各段に味が良くなるからだ。

 「そうね」
  加代が、ちょぴり、名残惜しそうな顔をした。

 こうして、汽車は、東海道線を、何回も乗り継ぎ、
 何日もかけてようやく横浜に着く。


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