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作品名:北の大地で自由を謳歌する 作者:ぷーでる

第2回 父息子のすれ違い
 明治三十五年―
 震度6という、多大な被害を受けた濃尾地震の爪痕すらなくなって嘘の様だー
 それは、勇敢で献身的な岐阜の人々の努力の結果だろう―

 金華山のふもとー
 トテ馬車がラッパを鳴らし、通り過ぎるー

 行き交う、商人たちー
 商工業で、賑わう城下町があった。

 傘屋に、酒屋、紙問屋……
 その隣に、ひときわ目立つ小林呉服屋が建っていた。
 瓦屋根に、うだつの上がる屋根。隣家からのもらい火を防ぐ防火壁だ。
 
 これが出来るのは財力のある家だけで、普通は出来ない。
 そして、近々、日本はロシアと開戦するかもしれないという事で
 資金援助しようとまで考えている。

 その呉服屋に、英俊という長男が住んでいた。
 離れの二階部屋―
 ガラス戸からは、金華山が見えている。

 「そろそろ、お前も嫁をもらう年だ」
 父親が畳の上で、座して機嫌の悪そうに、キセルを吸いながら、呟く。

 「俺に呉服屋を継げと?」
 父親と向き合って座していた英俊は、怪訝な顔を浮かべた。

 「当たり前だ、それが長男の務めだろう」
 「俺、絵描きになりたいんだ」

 「お前に良い、見合い話がきているんだ」
 「俺には、もう好きな人がいる」

 「誰かね?」
 「向かいの呉服屋の娘だよ」

 英俊がそう言うと父親の顔が、急に怪しい雲の様に
 暗くなった……次に、怒りの雷が落ちた。

 「あほ!よりによって商売敵の娘を好きになる奴があるか!
   しかも、あの家は京都由来。京都の女は、気位が高くっていけねぇ……」

 父親は、立ち上がってガミガミ怒った。

 「加代さんは、教養があるし性格もそんなに悪くないよ」
 「おまえは、あの娘に騙されているんだ」

 父親は、頭を抱えた。

 「別に誰を好きになろうと関係ないだろ、オヤジ!」
 「だが、あの娘だけは結婚相手としては許せん!」

「俺は、あきらめないぞ!」
「あんなワガママ娘と結婚したら、後々苦労するぞ!」
 
 父親は、我慢できなくなって、
       長男の頭に拳骨を振り下ろす。

 「いてぇ!」
  英俊は、二階から駆け下り、一階の裏から縁側へ駆け下りる。

 「こら!話は終わっていないぞ」

 父親が言い終わる頃には、英俊は庭から姿を消し、
 鹿威がコーンと風流に鳴り響いた。


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