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作品名:改 1 シンラ 作者:ぷーでる

第3回 ねずみと少女

 日曜日の良く晴れた、お昼頃の事だった。
    ドブネズミは、お花いっぱいの公園へやって来る。

 

 ちょっと肌寒いけど青空に、
         太陽が輝いて、風も気持ちいい。
                あたりには、ハトも飛び交う。



  どこからか風に乗って
         美味しそうなクッキーの
               匂いが鼻をくすぐった。

 

 クッキーの香りをたどると、
          ピンクのワンピースを着た
               五歳位の少女の姿が目に映る。

 

 少女が噴水の近くにある
        白いベンチに座って
            お菓子を手にしていた。

 

 「あら、可愛いネズミさん」

 

 ドブネズミが、ベンチの上まで
       這い上がって来て隣に近寄って来ると、
                 少女は、太陽の様に微笑んだ。

 

 本来、ドブネズミは
       警戒心の強い生き物である。
              滅多に人前に姿を現さない。

 

 それなのに出て来たのは、
       少女の純粋で、暖かい気持ちを
                   感じたからだ。

 

 「はい、これあげる」
 
 少女は、隣に座っている
       ドブネズミに、お菓子を
                 差し出す。

 

 ドブネズミは、差し出されたお菓子を
             受け取ると喜んで両手で抱えて
                     軽快な音を奏でて口に運ぶ。

 

 「美味しい?良かったね!」
 少女は、指でドブネズミの頬を優しく撫でた。

 

 ドブネズミは思わずうっとり、
           幸せな顔をする。

 

 子ネズミの頃に母ネズミに
          舐めてもらった感触に似ていたから。

 

 「ネズミさんバイバイ」
 少女は明るい笑顔で、手を振って公園を去って行く。
 
 

 ドブネズミは、世の中冷たい人間ばかりじゃないと
                 少女を、見送りながら思った。
 
 

 巣に帰る途中、先ほどの少女が、
        見知らぬ中年男に刃物で脅され

 

 人気のないビルの屋上へ
        連れて行かれるところを目撃した。

 

 これはただ事ではないと
         思い後を追う。

 

 中年男は、何やらワケの分からない事を言い
               少女を屋上の端に立たせた。
 
 


 ドブネズミは、ピンチだと察知。
        猛スピードで壁を、這い上がる。
              次に、屋上近くでジャンプした。

 

 「チュウッ!」
 (ドブネズミが叫んだ声)

 「げっ?」
 (中年男の悲鳴)

 「あっ?ネズミさん!」
 (少女の驚いた声)

 

 壁を這い上がってきてジャンプした
            黒っぽい生き物に、中年男が驚き
                       刃物を落としてしまう。

 

 ドブネズミは、ここぞとばかりに中年男の顔面に
                   向かって飛び蹴りをかました。 

 「げふっ!」
 
 

 中年男は
 サングラスが吹っ飛び
 コンクリートの床に転がった。

 突然の事でワケも分からずにいたが
 顔を上げて何かに驚く。

 「ひいっ?」
 
 

 中年男は、何が恐ろしくなったのか、
  突然逃げ出す。非常階段を駆け下りる。

 途中で、足を滑らせてズダダダッと
 真っ逆さまに落ちていく―

 


 「ありがとう、助かったわ。お兄ちゃん」

 少女が、感謝を
 込めた顔でこちらを見上げた。

 


 「え!お兄ちゃん?」
 ドブネズミは、驚いた。

 


 自分が人語を喋っている事に。
 


 その時、気付いた―

 自分は今、四本足ではなく
 二本足で立つ。

 頭に手をやると、サラリとした
 白っぽいシルバーの
 長髪が覆う。

 顔に手で肌を触ると、覆っていた毛は、
 無くお肌ツルツルだ― 

 口元のヒゲもナイ。
 自身を視れば体毛の代わりに、
 白い和風の衣類を身に着けている。

 二本足になってしまった
 ドブネズミに少女は、驚く事なく
 青年のそばへ歩み寄った。

 



「あれ、僕どうしちゃたんだろう?」
 青年は、戸惑っていた。 

 


 目線は、急に高くなって
 足元の地面が遠く見える―

 さっきまで見上げて視ていた、
 少女を今は見下ろす―

 少女から優しい人間の心をもらった事によって
 ドブネズミの魂を人間の魂に変えていた。

 



 「私、片岡晴海。よろしくね。あなたは?」
 小さな少女が、二本足の青年の手を握る。

 


 「僕、名前無い」

 二本足の青年は、少女の小さな手の上に
 片方の手で触れる。

 さっきまでは、僕の手の方が小さかったのに
 今は逆転してこっちの手が大きい― 

 


 「まあ、可哀想」
 晴海が、少し悲しげな目。

 

 「僕は、仲間とか友達もいないから」
 二本足の青年が、寂しそうな目。

 

 「私が、名前をつけてあげる」
 晴海が、慰める様に声をかける。

 

 「なんて名前?」
 二本足の青年が、晴海の目を見つめる。

 

 「シンラ、どう?」
 晴海が、目を星の様に輝かす。

 

 「いいね」
 青年も、嬉しそうに目を星の様に輝かした。

 

 「良かった、私はこれで帰るからね。バイバイ〜」
 晴海が、笑顔で手を振るー



 商店街のある方向へ
 駆けて行って去った。

 

 シンラは、笑顔で晴海を見送ると
 ドブネズミの姿に戻る。

 

 いつもは、冷たいコンクリートの都会が
 何故か温かく感じていた。


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