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作品名:改 1 シンラ 作者:ぷーでる

第18回 シンラの謹慎中
 
 「やれやれ、とんでもない物の怪を雇ってしまった」
  フチは、シンラを連れ鏡村へ帰って来ていた。

 ― 三峰山、北奥は夜になり、
        我神屋敷では、魂の旅館が開館する。


     夜空には、赤い月が輝きだした―


 「どうした事だろう?
    いつもなら狼の咆哮が聞こえるはずなのだが―」と、フチは、顔が曇る。

 狼の咆哮のおかげで、
 悪い邪気の侵入を防いでいるから。


 五階屋敷の窓から、外の景色を眺めている。
 何かを、感じている様子だった。

 やがて人間の魂達が、来館し始めた。


 「いらっしゃいませ、どうぞごゆっくり!」
 玄関で、営業員達が人間の魂客達を、出迎え招き入れる。


 「女将さん、いつもご美人で……」
 「あれぇ?シンラさんは?」


 玄関からわきあいあいと、
 入館して来た、客達の何人かがシンラの姿が無い事に気付く。



 「シンラさんは今、謹慎中でして―」
  美しい着物姿の女将が、申し訳なさそうに頭を下げた。


 「ええ〜?俺達が、酒で、つぶしたせいですか?」
 「アイツがいると面白いのに〜!」
 「だよな〜他の営業員達と違って、何ていうか―」
 

  客達が、ガッカリする。
 

 「いえ、違います。どうかお気になさらずに―」と、
               女将は、頭を下げて客達を部屋へと案内した。


 「フチ様ぁ〜!出してくださいーっ!」
 

 屋敷一階部屋に置かれた、
 ケージの中でダイコクネズミ(シンラ)がわめいていた。
 


 「駄目じゃ、シンラ。おまえは重大な損害を与えた!」
 フチが、ケージの中のダイコクネズミ(シンラ)を睨む。


 「でも、働かないとエサもくれないんでしょ?」
 ダイコクネズミ(シンラ)は、カラの餌箱を視る。


 「当たり前じゃ!」
  フチが、握り拳を、作って怒りに震える。
 

 「飢えちゃうよ!」
  ダイコクネズミ(シンラ)が、格子を握って鳴く。
 

 「おまえは、物の怪じゃ。その位では飢えぬ!」
 フチが、ケージの中のダイコクネズミ(シンラ)に指差して怒鳴る。


 「……」

 ダイコクネズミ(シンラ)は、ショボンとうなだれた。


 「捨てられないだけ、マシと思え!捨てられたら、
  お前は路頭に迷い再び惨めな生活に戻るのだ。そして穢れていく」
 


 フチは、ダイコクネズミ(シンラ)を、
 ケージに閉じ込めたまま一階屋敷部屋を後にして、出て行った。



 「捨てられたら、穢れるどころか喰われて終わりなんだ」


 ケージの中で、ダイコクネズミ(シンラ)は
          自然界の厳しい掟を思い出し、悲しむのだった。


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