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作品名:改 1 シンラ 作者:ぷーでる

第10回 魂の勘定
 
 現世で穢れのないまま病死、自殺、殺害死、
     事故、災害死、戦死などによって命を落とした者は、
        さまよい、悩み、転生して、もののけとなり、鬼神となる―

 


 魂の旅館で働く営業員達が、そうなのだが
 前世で、何があったかは忘れている。
 
 嫌な事は、自らリセットしてしまうのだろう。

 
 部屋の十二支時計が、子の正刻になった時―
       多くの人間達が、息を抜いて夢を視る―

 
 その時、肉体から魂が抜けるのだ。
      魂の湯治客達が、わきあいあいと訪れる。
            ますます、忙しくなってきた。
 
 初勤務という事で、旅館の受付は見学をする事になる。
 ここでの支払いは、前払い制だった―




 「お客様、黄金の間は一晩、百万円となっております」
 
 着物を着た受付の女性が、カウンターに秤を置いた。
 その秤には、青白い魂が一つ載っていた。


 「これでお願いします」
 男性客が、百万円の札束を出す。

 受付嬢が、百万円を受け取り、札束を秤に載せた。


 「申し訳ございません、この百万円は魂の重さより
        軽いです、その為ご規定の金額に達しておりません」

 秤にかけられた札束が、魂の重さに負けて浮いていた。
 

 「何だって?」
  
 男性客が焦る。
 

 「そういうわけで、お引き取りくださいませ」
 「責任者を出せ!ワシが苦労して稼いだ金だぞ!」



 受付で騒いでいると、フチがそこへやって来た。


 「お客様、嘘を言っちゃあいけないよ」
 「何?」

 男性客がフチを睨む。


 「そのお金は、詐欺で稼いだから重みがなくて軽いのだ」
 「なっ?」


 男性客が、フチに言われて、そんなバカなという顔をした。

 「隣のお客様のお支払いを視てみなさい」
 フチに言われて、隣のカウンターで支払いの様子を見る―

 「ありがとうございます、星屑の間、五十万円は
  ご規定の金額に達されました。ごゆっくり、お過ごしくださいませ」


 隣の受付嬢が、富豪の娘にニッコリと対応する。
 秤に載せられた白い魂と、五十万円の札束は見事に釣り合っていた―

 「くっ!」
 男性客は、真っ青な顔になった。

 受付に並んでいた客達が、その様子をじっと見入る……


 「あの人詐欺師だって」
 「うわ、ここじゃ悪い人がハッキリ分かるんだねぇ」

 客達が、口ぐちに噂し合うと、
 男性客は、青かった顔を次に赤くして恥ずかしそうに退館していった……



 「魂の旅館って、不思議なお勘定をするんだね」
  シンラが、その様子を見て興味深く感じた。


 「おまえは、ネズミだからお金の価値は分かりにくいであろう?」
  フチは、シンラに受付はムリかもと思った。


 「でも、お金って使った事があった様な気がする」
  シンラは、意外な事を口にする。

 「いつごろの話だい?」
 「忘れた」

 シンラは、受付の見学が済むとそこを後にした―










 シンラは、我神屋敷の営業員達に混じって
 仕事を始めた。
 
 何もかも初めてなので、ちんぷんかんぷんである。
 とりあえず、営業員のやっている事を視てマネする事に。
 
 
 我神屋敷の4階、大広間で宴会が始まった。
 食事を運ぶのを、シンラは手伝っている。
 
 営業員達は、全員隣の部屋へ行ってしまった。
 シンラだけが、そこで客達の世話をする事に。
 
 「お?新人かぁ〜」
 (A浴衣の男が、シンラに目をつけた)
 
 「何か、可愛いな。おまえ」
 (B浴衣の男が、シンラにウットリ)
 
 「名前は?」
 (浴衣の女が、興味深々にシンラに聴く)
 
 「シンラです、今日からここで働いています」
  シンラは、客達に頭を下げた。
 
 「そうか、シンラか。いい名前だな」
 (B浴衣男客が、うなずく)
 
 「シンラも飲めよ、ホラ」
 (A浴衣男客が、シンラに酒を差し出す)
 
 「え?」と戸惑うシンラ。
 
 「いいんだよ、今日は就職祝いだ」と言って
 
  浴衣女客が、シンラに杯を持たせた。
 
 「そうですか、じゃいただきます。」と
               言ってシンラは、杯に注がれたお酒を飲む……
 


 これは、仕事だ。客へのサービスなのだと思って。


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